オンラインイベント開催で気づいたリアルの良さ
小野:ランナーのためのSNSアプリ「Runtrip」を活用したオンラインイベントで、最大3万3000人ものランナーが集まることは衝撃的でした。
大森さん:オンラインイベントは毎月開催する度にコミュニティが広がって、サービスも進化しています。「Runtrip」も、SNSアプリから、メディア、ECを含めた総合アプリとして発展させていく予定ですが、オンラインイベントの回数を重ねるなかで、やはりリアルイベントでしか味わえないものに気づきました。
大勢で同じ料理を楽しんだり同じ空間を共有したりするような、大きな熱量を感じられることをオンラインで提供するのは、やはり難しいんですよね。
小野:オンラインイベントの良さを実感しているからこそ、リアルイベントでしか得られない空間や熱量の高さを感じるということですね。
大森さん:そうですね。たしかに、イベント参加者を獲得する段階まではオンラインを活用したほうが効率がいいかもしれません。しかし、継続率や参加者の消費金額のような参加者獲得後のエンゲージメントについては、リアルイベントの方が高いのではないかと思うんです。事業全体でみたときにプラスであれば、イベント単体の収益にこだわる必要はなくなります。今後、そのあたりを可視化して、面白いイベントを企画してみたいですね。
小野:それまでオンラインで参加していた人たちが、リアルイベントに来てくれる流れが生まれてきそうですね。
大森さん:そうですね。オンラインで既に知ってくれていた人がリアルイベントに集まってくれるようになると、また新しい動きが起きてきそうです。
小野:それまでオンラインでつながっていた人とリアルで集まる楽しみってあると思うんですよね。ある種、オフ会に近い感じかもしれませんね。
大森さん:まさにそうですね。そんな風に今、オンライン、リアル共にいろいろなピースが集まってきているところです。
「食」だからこそ実現できる場とは?
小野:リアルに何かを始めるとしたら、どんなコンテンツが面白そうでしょうか。
大森さん:そうですね。やはり、うまい料理って人を引き付ける力がありますよね。
最近は世の中で健康への関心が高まっているので、多彩な食材をアレンジできるMo:takeの強みを感じます。美味しいし、健康的だし、見栄えの良さも大事です。
小野:うれしい。僕もこの数年、イベント開催のスタイルが変化しているのを感じているのですが、これからは大規模ではなくても、一人ひとりのライフスタイルにつながった、より参加者と距離の近いイベントが長く続いていくことが大事な気がしています。
大森さん:そうですよね。華のある大きなイベントを瞬間的に開催するのも刺激的ですが、いかに定常的に行うかが大事だと思います。
小野:例えば、オンラインをうまく活用しながら、それまで100人規模で開催していたリアルなイベントを20人くらいの規模で行うのはどうでしょうか。本音も言えるような雰囲気づくりを大切にして。そういう場を定期的につくれたら面白そうです。
カフェで小さなリアルイベントを開催した後、イベントのために開発したドリンクを1週間限定で提供するというのも面白そうだと思っています。イベントに参加した後にカフェでまた会う約束をして、話し足りなかったことをもっと本音で話せる機会になったらもっといい。
大森さん:なるほど。食の場は本音で話したいと思わせる魅力がありますよね。
運動をした後の食事ってなぜこんなに美味しいのだろう
大森さん:運動って、身体を動かすこと自体に喜びを感じる人も多いけれど、孤独感や苦しさなど辛さをともなう一面もあります。だから、頑張った後にご褒美があることは大事だと思っています。ご褒美があるから頑張れることもあるだろうし。
走った後の食事はうまいし、走ってから飲むビールはうまい。走ったからこそ味わえる美味しさがあると思います。走った後のほうが、料理やドリンクをもっと楽しめるというか。美味しい料理やドリンクは、走りを楽しむためのご褒美にもなると思います。
小野:身体を整えた後だからこそ、美味しさが増すんですよね。
大森さん:その通りです。運動をしてお腹がすくから、美味しいものがもっと美味しく感じられる。そういう意味でも、ランニングと食はすごく相性が良いと思います。
人生を楽しむ上で、できる限り我慢を伴わずに楽しめるといいですよね。ラントリップでは、運動やランニングも我慢するだけではない楽しさを伝えていきたいと考えています。食事も、健康のために我慢をする場合があるかもしれませんが、「楽しい」「美味しい」をきちんと提供したい。もっと美味しく食べるために運動するというモチベーションも大事だと思います。
小野:走ることを軸に衣食住を考えるようになる、ということですよね。「衣」でいうと、ランニングシューズを買うと一所懸命走るようになる、というのもありますよね。僕自身も、シューズを買ってからもう2年半、モチベーションが続いています(笑)。
大森さん:「住」の面でもやれることがあるんじゃないかと思うんですよね。というのも、ランニングしている人って、地域の健康に貢献しているのではないかと思うんです。「運動した」という実績に対して地域の医療費を抑えているというエビデンスが取れれば、抑えた医療費の一部をユーザーに還元し、さらに街に還元していくこともできるのではないかと。
小野:具体的には?
大森さん:たとえば、走った分に対してコーヒー1杯分のチケットをもらえて、そのチケットで地域のカフェでコーヒーを飲める仕組みをつくるんです。街にとっては医療費が下がり、ユーザーは抑えた医療費の分のコーヒーが飲めて、地域のコーヒー屋さんは収益を得られます。そんな構造を作れたら面白いですよね。ランナーフレンドリーな街として、シティブランディングにもつながっていきそうです。
小野:人間の社会はこれまで、なるべく動かずに済むことが便利だと思って変化してきたと思うんです。でも肉体がおざなりになるのはまずいと気づいて、走ることの良さを感じる人が増えてきているのかもしれませんね。
大森さん:たしかにそうですね。これから人はもっとデジタルの中に住むようになっていくと思いますが、だからこそ、身体的な健康をどう豊かにするかが問われると思っています。何を食べるのかも同じですよね。「スポーツ」と「食」って、デジタルが進化するほどにすごく価値が高まっていくものだと思うんです。
次回は8/4(木)に公開予定です。デジタルの進化にともなってスポーツと食の価値が見直されていくと話す大森さんは、どんな未来を見ているのでしょうか。小野と語り合います。(つづく)
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