SERIES
Food Future Session
2023.04.13. | 

[Vol.1]池袋のまちに人が来て、滞在し、お金を使う仕組みを作りたい【シーナタウン 日神山 × Yuinchu 小野】

「Food Future Session」という壮大なタイトルで展開する、×Mo:takeの座談会。今回は、池袋西エリアで有志と「株式会社シーナタウン」を設立し、商店街のまち宿とお菓子工房「シーナと一平」など、場所・空間・まち作りの提案と運営を行っている日神山晃一(ひかみやま・こういち)さんとYuinchuの小野正視の座談会です。「シーナと一平」を会場に開かれた座談会。Vol.1では、シーナタウンが生まれたきっかけや池袋という場所の抱える課題、シーナタウンが目指すまちの姿について語っていただきました。

リノベーションスクールでの出会いから生まれたシーナタウン

小野:まずは株式会社シーナタウンについてお聞かせください。

 

日神山さん:シーナタウンは、まちの有志5人で7年半前に立ち上げた会社です。それぞれが自分の会社を持っていて、その得意分野を持ち寄って、街でいろいろなことを試してみようと立ち上げました。

 

小野:どんなきっかけで出会ったのでしょうか。

 

日神山さん:豊島区は遊休不動産を活用したまちづくりを推進しているのですが、当時、「リノベーションスクール」というプログラムが開催されていました。そこで出会った仲間です。

ゲストハウス「シーナと一平」は元々とんかつ屋「とんかつ一平」だった物件ですが、スクールで一緒のチームになったメンバーと「この場所だったらいろいろな事業ができるね」と盛り上がり、大家さんに「こんな宿をやりませんか」と提案させていただいたのが始まりです。

 

最初は池袋が地元ではない3人ではじめようとしたのですが、「地域に根付いた活動をするために、その土地で生まれ育った人と一緒にやりたい」と思い、池袋で生まれ育ち、事業をし、家庭も持っているメンバー2人にも入ってもらいました。私が代表として表に出る役目をしていますが、経営的なことも、事業も、それぞれ役割分担することでうまくいっています。

 

地域が良くなるために必要なのは、外の人に「面白い」と思ってもらうこと

小野:豊島区が開催したリノベーションスクールは、遊休不動産を活用したまちづくりのためのプログラムとのことでしたが、背景にある遊休不動産や空き家問題について聞かせてもらえますか。

 

日神山さん:豊島区は23区の中で5つだけある消滅可能性都市の一つと言われています。それは20,30代の女性層や若者がどんどん出て行ってしまうからですが、そこにはハード面の問題があります。

単身者が住める部屋はたくさんあるのですが、子どもが生まれた家族が住むのにちょうど良い広さや家賃の部屋があまりありません。一方で、私は、ソフト面でもできることがあるのではと考えていました。

この場所で最初にやりたかったのは、まちの魅力を知って「面白い」と思っている人たちに外から来てもらうことです。地域を良くするためには、地域の人だけで盛り上がってもあまり意味がありませんから。

そこで、外からこのまちに人が来て、滞在したり、お金を使ってもらえるような仕組みにしたいと思いました。そうなると、「このまちはつまらないまちだと思っていたけど、意外といいじゃん」とまちの人たちがプライドを持てます。実際に、海外からいらっしゃる「シーナと一平」の宿泊客は商店街を通ってここにたどり着く方が多いのですが、「商店街っていいね」と言ってくれます。

 

小野:地元の人たちが自分のまちにプライドを持てるようになるのは、すごく大切だと思います。

 

子育てを楽しんで生活している人の姿が見え、多様性のあるまちを目指して

日神山さん:商店街のまち宿とお菓子工房「シーナと一平」は、最初はミシンカフェから始まりました。私の実家が岡山の内装会社を営んでいて、母は今でもミシンでカーテンを縫っているんです。私もミシンを使えるので、ミシンを置いてスタートしました。

 

この場所のコンセプトは「ミシンや手作りでまちとつながって、ファブリックで世界とつながる」です。このまちでは世代間で繋がる機会が少ないんです。商店街で顔を合わせても、なかなか仲良くなるきっかけがない。そんな世代間の接着剤になるのは、手作りのものなんじゃないかと思ったんです。

私は絵本から服、人形まで、全て母の手作りで育ちました。地域の年輩の方も手作りで育ってきたと思いますが、一方で、今子育てしている人はこれまで手作りをしたことがない方も多いと思います。それなのに子どもの入園や入学時にいきなりミシンを使って手提げ袋などを準備するように求められます。だったらここにミシンを置いて使ってもらおうと思ったんです。300円支払ってもらったら、いつまでも縫っていていいよと。

布を寄付できる寄付箱も置いたところ、布を使う方よりも寄付する方が多くて。小上がりのところで、子どもをあやしながらミシンを使って縫っている光景がよく見られました。

現在はミシンの利用は終了していますが、「手作りの愛着と顔の見える関係を大事にしたい」という思いはそのままに、今はお菓子工房(シェアキッチン)として使っています。

 

最初の話につながりますが、若い人たちがまちから出ていってしまうのは、まちで子育てしている女性の先輩の姿がなかなか見えないことも一つの理由だと思います。でも、子育てしながらミシンを縫っていたり、お店を出している人の姿が見えると、「私もできるんじゃないかな」と思ってもらえると思いますし、そうする必要があると思います。

そういうまちのヒダがないと、このまちから出ていってしまう人が増えると思います。子育てを楽しんで生活しているシーンや人の顔が見えることが大事ですよね。そして、日本人だけでなく外国の人も普通に歩いていることが、生活の豊かさ、多様性といえるのでは、という思いからシーナタウンをスタートしました。

 

次回は4/18(火)に公開予定です。シーナタウンが運営している場所のそれぞれの特徴や、場の運営において大切にしていることについてお聞きしていきます。

 

– Information –
シーナタウン

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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