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Food Future Session
2023.03.02. | 

[Vol.1]食はアセットだ!スモールオフィスで働く人たちの一日を支える、Mo:take 2022年の挑戦【「Mo:take」ヘッ ドシェフ 坂本英文 ×「Yuinchu」代表 小野正視】

「Food Future Session」という壮大なタイトルで展開する、×Mo:takeの座談会。今回は、Mo:takeの1年間の活動を振り返るスペシャル企画です。

2020年、2021年のMo:takeの活動については、これまで2回の対談記事でお伝えしてきました。

[Vol.1]コロナに負けない。そして、今ここから始める。「Mo:take」ヘッドシェフ 坂本英文 ×「Yuinchu」代表 小野正視

[Vol.1]コロナ禍の2年間で、Mo:take LABOはこう変わった!【界外亜由美×Mo:take】

依然として続くコロナ禍。私たちの食をめぐる価値観も、日々変動し続けています。そんな2022年、Mo:takeは新たにどんなことを考え、どんなふうに動いてきた のでしょうか。小野と坂本が振り返ります。インタビュアーは、2022年3月の記事で2人と対談した界外亜由美(かいげあゆみ)さんです。

コロナ禍でも続く、働く人たちの生活。食でどうやって支える?

−−湾岸エリアのスモールオフィス「the SOHO」内に、「SWITCH STAND ODAIBA」がオープンしたのが2022年の2月だと伺いました。立ち上げまで、どんな経緯があったんですか。

 

小野:the SOHOの1階にもともと入っていた飲食店がコロナを機に退店して、入居者さんたちが食事する場所がなくなってしまったんです。飲食店の少ないエリアだということもあり、これは入居者さんたちにとって大きな問題です。

「入居者さんの生活は続いてるので、なるべく早めにやってほしい」と管理会社のRJオフィスさんからリクエストをいただきました。「やります」と決めたのは2021年の12月で、そこから1ヶ月半でオープンしたんですよ。

 

−−早く食事を提供できる状況にしないと、下手すると入居者さんが抜けちゃうかもしれないですものね。かなり切実だったんじゃないでしょうか。

 

小野:the SOHOという施設のグランドデザインに対して、飲食というアセットが必要不可欠だったということですよね。僕はこれ、今後すごく重要になってくる視点だと思っていて。そこに応えることが、僕たちの経験としても大事なんじゃないかと思い、決断しました。

 

思いのこもった手触り感と経済的合理性を両立するには

−−とはいえ、ビジネスとしては飲食店の運営ってそう簡単なことではないと、お2人とも知り尽くしていらっしゃいますよね。実際、どんな風にやっていったんですか。

 

小野:今後コロナがどうなるか分からない中で、僕たちにとっての飲食ってなんだろうと改めて考えました。僕たちはやっぱり、飲食って美味しくて手触り感のあるものがいいと思っている。それをどうやったら経済的に、サスティナブルに実現できるだろうかと考えました。

そこで、坂本には今回、

「調理に慣れてないスタッフでも確実に美味しいものが出せる状況をどう作ればいいか考えてほしい」

とオーダーしたんです。

 

−−坂本さんはどんな風に考えていったんですか。

坂本:入居者さんにとっては毎日の仕事の合間のランチだから、栄養バランスはもちろん、そのご飯を食べることが一日の楽しみであってほしい。一方で、一般的なランチはどうしても調理工程が複雑になります。とはいえ簡単にできるものだと働く人たちの空腹は満たせない。そこをどうカバーしようか考えました。

そこで、肉や魚、野菜をバランスよく摂れるメニュー構成とレシピを僕が考え、調理したものを真空冷凍で納品し、カフェではそれを温めたり、ちょっとだけ手を加えて提供するというオペレーションを構築しました。

 

小野:ここ2〜3年で、主にMo:take LABOの活動を通じて、坂本の中に、加工品に対するノウハウが蓄積されていたんですよね。加工品と言っても、半分だけできている状態で、飲食業として仕込んでおけるタイプの加工品です。その経験がバチっとはまった。

 

坂本:半加工品とはいえ、レシピから起こして手作りした料理を真空冷凍にしたものなので、既製品の半調理品を使うのと、形は同じなのかもしれないですけど、やっぱり思いが詰まってるというか。人の手による愛情の詰まった料理をいかに効率よく提供するか、と考えながら作っていきました。

 

−−家庭の「作り置き」に近い感覚なのかもしれませんね。

 

ケータリングで培ったノウハウを、カフェのオペレーションに注入する

坂本:思いを込めて自分たちでつくる、というところは外さずに、いかに効率化するかという視点は、僕らが長くケータリングをやってきたからこそ培われてきた部分だと思ってます。

というのも、ケータリングは、厨房で仕込んで、現場で提供します。道具も環境も限られた中で一番美味しい状態で提供するための工夫を、ずっと積み重ねてきた。

今回はオープンまでのスケジュールがかなりタイトだったので大変でした。僕がthe SOHOにはじめて行ったのが1月で、2月にオープンだったから笑

 

−−かなり慌ただしいですよね。

小野:飲食店の立ち上げとしては異例のスピードだと思います笑。

 

坂本:でも、そのスピードでできるのがYuinchuの得意なところかな、と思ってます。今回のスタイルも、考え方は、僕らの中ではケータリングのバリエーションの一つなんですよ。

ケータリングの、キッチンがない場所で美味しい料理を提供するためのノウハウを、調理に慣れてないスタッフにポイントをレクチャーし、提供するということを今回のシチュエーションに注入したという感じですね。

 

求められたのはウェルネスよりも「ガッツリ」だった

−−オープンしてもうすぐ1年経ちますが、印象に残っていることはありますか?

坂本:オフィスの中のカフェって、働く人たちのライフスタイルの一部じゃないですか。だから、ウェルネスの視点というか、身体にいいメニューも出したんですけど、実際によく出たのは、ガッツリ系のメニューでした。

 

−−なるほど。でもそれ、ちょっと分かる気がします。朝と晩、家で食べるご飯は健康志向の人が多いから、「昼ぐらいは自由に食べたいな」っていうことなんじゃないですか。

坂本:そうなんですよね。とはいえ、生活の一部だという考えもあるので、見た目はガッツリ系だけど、ちゃんと健康管理ができるメニュー、という観点を少しずつ入れていきました。

 

−−実際にはどんなメニューを作ったんですか。

坂本:肉とかお魚のメイン、野菜、ご飯やパンが一皿の中に全部入っていることを基本にしています。スパイシーな肉と野菜をたっぷりはさんだピタサンドとか、人気でしたね。

あとは、肉に比べて魚は普段食べない人が多いので、魚のメニューも積極的に入れています。鯖のトマト煮込みなんかがそうですね。

 

小野:そんな風に、the SOHOというひとつの施設に対してどういう場や食が必要なのか、一方でそれをビジネスとして捉えたときに、僕たちもオーナーさんも、利用者さんにもメリットが出るにはどうしたらいいか考え、一つずつ形にしてきました。そこをバランスさせていくスタイルを、今後も考えていきたいですね。

 

次回は3/7(火)に公開予定です。
次回は、2022年のもうひとつのチャレンジ、PLAYLIVING IZUとの取り組みについて振り返ります。PLAYLIVING IZUは伊豆高原にある一棟貸しの宿泊施設。「宿泊体験の中の食」という新たなテーマに、どう向き合ったのでしょうか。引き続き、小野と坂本が語り合います。

 

ーInformationー

SWITCH STAND ODAIBA
WEB:https://switch-stand.com/odaiba/

ライター / 八田 吏

静岡県出身。中学校国語教員、塾講師、日本語学校教師など、教える仕事を転々とする。NPO法人にて冊子の執筆編集に携わったことからフリーランスライターとしても活動を始める。不定期で短歌の会を開いたり、句会に参加したり、言語表現について語る場を開いたりと、言葉に関する遊びと学びが好き。

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