患者さんもふらっと立ち寄れる場所。
そこに必要な飲食機能があるというイメージ。
ーー完全に地元の人だと思っていましたが、和田さん、ここが地元じゃなかったんですね!(笑)もともとバリバリの営業職っていうのはコミュニケーションを見てても納得ですが、どんな風にこの場所にたどり着いたのでしょうか?
和田さん:そうなんです、ここは地元ではないんですよ。(笑)本当に縁とタイミングで、ここにいるっていう感じなんです。漠然と35歳までには起業したいって思っていた自分は、前の会社に勤めながら「次のステップはどうしようか」って考えている時期があって。小野さんと飲みに行ったり、その縁でMo:takeの坂本さんにも出会えて、仕事観とか悩みも含めていろいろ話をさせてもらったりもしていたんですよ。
それと糟谷とは、もともと同じエリアの国立市で仕事をしていたつながりから、皇居ランなどもいっしょにしていました。その頃、すでに起業していた糟谷からは、シンクハピネスの“村構想”のビジョン以外にやりたいこととして、“訪問看護ステーションの患者さんが立ち寄れる場所をつくりたい、そこをおしゃれな事務所みたいな場所にして、そこでコーヒーとかも淹れたいんだよね”っていう話をきいていて、おもしろそうだなぁと思っていたんです。
で、「それ誰がやるの?」って話になった時に「・・・じゃあ、どうぞどうぞ!」って自分がやらせてもらう流れに。(笑)でも当時、自分の人間性や仕事観も含めて、良いことも悪いことも聞いてくれていた人たちからも、「糟谷のビジョンにしげを(和田さん)がジョインしたら面白いことになるんじゃね?」って結構言われるようになっていて、だいぶ背中をおされはじめていました。
自分も次のチャレンジはやったことのないことをやりたい、0から1をつくるようなことをしてきたいと思っているタイミングでもあったし、糟谷もきっとピースが足りないっていう時期で、多分自分が一緒にやるのは、ちょうどいいタイミングだったんですよね。(笑)
ーー和田さんへの周りの期待も大きかったわけですね!その村構想以外のビジョンで患者さんを含めた地域の人たちが立ち寄れる場所としてきたのがフラットスタンドなわけですね?
和田さん:そうなんです、でも実は予想外のスピードでできてるんですよね。その話をしていた頃、またタイミングがいいことに、Yuinchuがオリジナルのコーヒー豆を使ってカフェを始めた頃と重なって、糟谷と一緒にその当時のカフェにいったら、、、糟谷が刺激を受けてしまって。予定していた計画よりも早くそういう場をつくりたくなっちゃったんです!(笑)
それを自分がやることになるんですが、素人だからできるわけもなく。そこでYuinchuにサポートをしてもらうんです。コーヒーの淹れ方から、メニュー開発、料理までも指導してもらって、フラットスタンドはスタートしたんですよ。
ーーそんなフラットスタンドも本当に色んなコトおこしがされる場になっていますよね。今回の『たまれ万博』では、公園の概念で場づくりを考えるPARK SPOTで協賛っていう関わり方で一緒にやらせてもらいましたが、フラットスタンドも多様な使い方をされるイメージがあるので、カフェというか公園という側面もあるように思います。
和田さん:そうですね、“公園”って何かって考えると、誰かのものではないし、決まった使い方があるわけでもないので、すごく自由なはずなんですよね。だから、いろんな使い方や楽しみ方があっていいし、本質的には誰かに与えられるモノではなくて自分たちでつくっていくモノなはず。もともと“公”ってそういうものだと思うんです。
和田さん:実はうちの店舗(フラットスタンド)の入り口の看板の一番下にはCOMINKANって書いてあるんです。それは、うちのカフェが飲食機能を持っているのではなくて、個々の活動がさまざまあって、そこに必要とされる飲食機能があるというイメージなんですよね。
スペースはあるけど、そこにコトがおこっていないとあまり場の意味がなくなってしまうように感じているので、カフェを入り口に、ワークショップやイベントがあるっていうイメージなんです。カフェ空間だけど、みんなが過ごせる場所で、コトが起きる。そこにスタンドが寄り添っている。こういったところは、PARK SPOTを含めてYuinchuの場づくりのスタンスに近いと思いますね。
失われていきがちな文化。
残したい風景を残していくために。
ーー確かにPARK SPOTに似たものを感じますし、スペースがあったらコトをおこしていく。そうすることで人がつながったり、誰かの見たい風景をみんなでつくることができるということですね。まだまだお話を伺いたいところですが、最後に和田さんにとっての場づくりの役割、場づくりをしてきて想うことがあればお聞かせください!
和田さん:コロナ禍ではイベントが自粛されるようになって、世の中の状況に合わせながらクローズでイベントをだいぶ増やしました。それで、コロナが落ち着いてきた時に、オープンのイベントもつくっていくんですけど、改めて「わたしたちがやる意味」って何だろうと考えて立ち止まったことがあったんです。
その時に、いろいろと考えながら、餅つきをやったり、書き初めをやったり、自分が子供の頃にもあった日本の風景をつくるようなことをした時に、“わたしたちがやる意味”が少し見えた気がしたんですよね。
和田さん:特にこの地域にいるから余計にそう思ったのかもしれませんが、この辺りの地域は祭りの文化が強いんです。「くらやみ祭り」っていう大きいお祭りの時に「お父さんは祭りが好きだったから」といって遺影を通りに飾っている人もいるんですよ。コロナ中にお祭りがなかったので、再開した祭りを見せてあげたかったんでしょうね。
祭りってすごい大変なんですよ、実際。だけど、やっぱりその中に大切なものもあったりして、そういうものって失ってから気づくことって多いと思うんですよね。
言語化しきれていなかったり、効率化しきれないものをつくっていくプロセスで、なにかが継承されていく。同じことを毎年やるってこともすごく大事で、改めてわたしたちがつくるコトに関して考え直しましたよね。そして残したいと思うなら意図的にそれをやらないと、残していけないとも思っています。
ーーそう言われてみると、お祭りの風景は、文化の継承というイメージがありますね。それを純粋に楽しみたいって思ったり、誰かに会えるかも!って期待したり。そんな新しい出会いや学び、気づきも得られる場になっているようにも思えますね。
和田さん:そうなんです、祭りってっ大事なんですよ!そういった考えで場づくりをすると、わたしたちが楽しまなきゃという場ではなくて、誰かにとっての目的地になったり、言い訳ができるような場ができるんです。
ただイベントをつくっているわけではなく、“わたしたちがやる意味”が見えてきたからこそ、主役は、参加してくれる1人ひとりであって、わたしたち運営は脇役であったり背景でいいんですよね、基本的には。でも出店者や運営スタッフも楽しんでいることも大事にしていて、それがあるからより来場してくれる人も楽しめる。それで、結果として、わたしたちが見たい風景もそこに浮かんでくるんだと思うんですよね。
ーーなるほど!来る人にもコトをおこす人にとっても“良い場”がつくられるわけですね!
となると、つまり和田さんにとっての場づくりとは?
和田さん:少なくとも「たまれ万博」においては、自分たちが“いいな”って思える文化や風景を残すための感覚共有の場にしたいなぁと思っています。それはその日限りのイベントではなくて、日常的な関わりや関係性が重なって生まれてくるはずなんですよ。
だから、梅シロップを作ったり、鯉のぼりを飾ったり、味噌を作ったりっていうこともゆるっと続けているんですよね。この時期になると、「ここではこういうことをやってるよね」って、10年後にも思い出してもらえるような風景をできるだけつくっていきたいと思ってますね、いろんな人たちと。
どんな質問にも真摯に答えてくれる和田さん。
これまでお話を伺ってきて、和田さんの生き方や考え方そのものが、自由なスタンスの公園のような余白を感じます。
”ルールのルール”をもって、場づくりやコトおこしをやる意味をみんなで考えて実行する。
多摩霊園駅から徒歩1分のところにある「たまれ」に、その地域らしい場が生まれる理由には、そんな想いで見たい風景を共有したい人たちがいるからかもしれませんね。
– Information –
株式会社シンクハピネス
たまれ万博’24レポート映像
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東京都府中市清水が丘3-29-3
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※外部イベント出店等による臨時休業あり
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