SERIES
Food Future Session
2023.03.09. | 

[Vol.3]「みんなで集まって食べたい」。人の根源的な思いにもう一度寄り添う【「Mo:take」ヘッドシェフ 坂本英文 ×「Yuinchu」代表 小野正視】

「Food Future Session」という壮大なタイトルで展開する、×Mo:takeの座談会。今回は、Mo:takeの1年間の活動を振り返るスペシャル企画です。

コロナ禍から3年。2022年は、ほぼ休止していたMo:takeのケータリング事業が少しずつ復活した一年でもありました。コロナ前から変わったこと、ずっと変わらないことについて、小野と坂本が振り返ります。インタビュアーは、2022年3月の記事で2人と対談した界外亜由美(かいげあゆみ)さんです。

「何のためにやるのか」という問いが深まっている

−−コロナが始まった2020年以降縮小していたケータリングが、最近戻ってきていると伺いました。世の中的にも「そろそろみんなでご飯を食べてもいいんじゃないか」という空気を感じます。とはいえ、コロナ前と同じ状態に戻っていくとは考えにくい。そういった中で、ケータリングに求められるものが変わってきているんじゃないでしょうか。

坂本:コロナ前までは、パーティーやイベントって当たり前だったと思うんです。コロナになって、オンラインで集まるスタイルが出てきた。オンラインで解決できることがあると気付きつつ、同時にオフラインの重要さもより際立ってきました。

 

小野:2022年の10月頃から少しずつケータリングの問い合わせをもらうようになってきていますが、イベントの幹事さんのニーズがこれまでとは変わってきているのを感じます。

 

坂本:「何のためにこのイベントをするのか」という部分が、ぐっと深まっていると思います。場を盛り上げるためにちょっとご飯頼もうか、くらいの軽さではなくなってきた。

 

−−お客さんの意識が変化してきている中で、どんなことを提供していこうと思っていますか。

坂本:うちでしかできないことって、食を通した体験の設計と提供なんですよね。それをいかにお客さんと協力しながら組み立てていくのかという部分は、より一層強くなっていますね。

ありがたいことに、「Mo:takeさんにお願いしたい」といってご依頼くださる方が多いんです。それは、僕たちが体験価値や食を通じて考えるきっかけを提供してきたから。そこを評価してご依頼いただいているんだと思っています。

 

「みんなで食べる」のニーズはまだ顕在化されていない

小野:少し思い切ったことを言うと、今の時点ではまだ、食事をみんなで食べることのニーズが顕在化されてないんじゃないかと思っているんです。

今は「今回のイベントには、本当に食事が必要なのか?」と問いが立っている状態です。でも、こんなご時世だし、なくてもいいんじゃないか、となってしまう社会の中で、それでも食事を入れたいと思っている人たちがいる。その思いに応えていくことに、僕自身とてもワクワクしています。

コロナ禍になったとき、当分ケータリングのニーズが戻ってくることはないかなと、ある種、腹をくくったんですよね。今少しずつ問い合わせが戻ってきていますが、ここから以前のようにケータリングの依頼が戻ってくるぞ、というよりは、食事を提供する機会の中に混ざり始めているぞ、という感覚ですね。それは、Mo:takeのアプローチの中に、再びケータリングが入ってくるということでもあります。

 

−−ケータリングがビジネス的に行けそうだから戻す、ということではないんですね。

小野:僕らのビジネスの中で、ケータリングはインパクトが大きいし、食体験を豊かにしていくという点では重要なツールなんです。でも正直、これでビジネスで勝てるかというとまだ分からない部分もあります笑

ただ、ケータリングはこれからもなくならない。これは間違いないと思います。むしろ、ここからもっと重要度が増すんじゃないかと思っているんです。

 

人間の社会がずっとやってきたこと

−−たしかにそうですね。コロナで急に会食をやってはいけないことになったけれど、よくよく考えればみんなで集まって食事をするということは、人間の歴史の中でずっと続いてきたこと。一緒に食べる理由を考えようとすれば考えられなくもないけれど、それ以上に理由じゃない根源的な部分もあるのかもしれないですね。

小野:そうですね。人が集まるときに食事をするということは、生物的な生体反応だという気がします。

 

−−コロナの状況も変わってきたいま、やっぱりみんなで食べたいと思う人が増えている。その一方で、今までだったら何も考えずにやれたことを、ルールみたいなものが求められている感じもありますよね。

小野:そうなんですよね。ただ、ルールもまだ正解がない状態で、感染に対して警戒する気持ちの強い人もいれば、それよりもこの機会を大事にしたいと考える人もいる。ケータリングを提供している会社だから解を持っているかといえば、そんなことはないんです。

だけど一方で、いまこういうご時世だけど、やっぱりやりたいという想いには寄り添いたいし、寄り添っていかなくちゃいけない、と強く思っています。

 

次回は3/14(火)に公開予定です。
SWITCH STAND ODAIBA、PLAYLIVING IZU、ケータリングなど、さまざまな場を豊かにする食体験を提供してきた2022年のMo:take。取り組みを通じて辿り着いた現在地について語ります。(つづく)

ライター / 八田 吏

静岡県出身。中学校国語教員、塾講師、日本語学校教師など、教える仕事を転々とする。NPO法人にて冊子の執筆編集に携わったことからフリーランスライターとしても活動を始める。不定期で短歌の会を開いたり、句会に参加したり、言語表現について語る場を開いたりと、言葉に関する遊びと学びが好き。

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Mo:take MAGAZINEは、食を切り口に “今” を発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、その時、その場所は、より豊かになるはず。

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