2023.07.20. | 

[Vol.2]人情がぎゅっとつまった街、茅ヶ崎。「海も山もある。空が広くて嬉しくなる」建築家/洋建築企画山口理紗子さん

茅ヶ崎南湖(なんご)にある「濱時間」のリノベーションを担当した、「洋建築企画」の山口理紗子さんは、大学進学で上京した後、出産を経て、地元の茅ヶ崎に戻ってきました。離れたからこそわかる茅ヶ崎の魅力があると言います。

コロナ禍に、人のつながりをつくる場として、高砂緑地で開催した「Takasuna Greenery Coffee Festival」では、実行委員長を務めた山口さん。イベントを通じて、街にどのような変化をもたらしたのでしょうか。

明治時代から静養地として発展した街。人情あふれる商店街も魅力

−−山口さんが小さい頃の茅ヶ崎はどんな街だったのでしょうか。

山口さん:茅ヶ崎は都会でもなく田舎でもない、ヒューマンスケールな街だったと思います。この間一緒にイベントをした商店街にも、昔ながらのお魚屋さんや傘屋さんがありました。傘屋さんで傘を購入すると名前を彫ってもらえるんですよ。本屋さんのおばちゃんも、会うといつも声をかけてくれました。コンパクトだけど人情のつまった街という印象です。

 

−−昔ながらのよさがある街なのですね。

山口さん:そうですね。整備された街というよりは、お店や施設がきゅっとかたまっているような感じです。道もうねっていたり細かったり。茅ヶ崎出身の私が今でも迷子になるぐらい細い道があります(笑)。ここは昔、漁師さんが大勢住んでたそうで、情報交換がしやすいように隣同士の距離が近かったらしいんです。なので、道で人とすれ違う確率も高く、人との物理的な距離が近いです。

 

−−茅ヶ崎の南湖院は「東洋一」のサナトリウムと呼ばれたくらい、心と体を癒してくれる場所だと言われています。

山口さん:明治31年に茅ヶ崎駅が開業して以来、南湖院を中心に湘南有数の別荘地や保養地として発展した歴史は、建築にも表れていて、私が子どもの頃は、長い塀が続いて、石垣の向こうが見えないような大きな邸宅がいくつも残っていましたね

 

−−今もその邸宅は残っているのでしょうか。

山口さん:それが、コロナ禍になって変化がありました。茅ヶ崎は海があっていい環境だと多くの方に思っていただくのは嬉しいのですが、移住希望者が増えたぶん、歴史のある邸宅は低層のマンションに建て替わっていき、さらに宅地開発も進んでいます。茅ヶ崎の魅力がなくなる前に、もともとの茅ヶ崎の良さを知ってもらえるようなイベントなどをやっていきたいですね。

 

離れたからこそ気づいた茅ヶ崎の魅力。海と山と人のつながり

−−一度地元の茅ヶ崎・高砂を離れたのですね。

山口さん:大学進学を機に上京して、池袋の隣の要町に住んでいたんです。要町の下町の雰囲気も好きでした。都内ということで広報誌などで子育て情報に触れる機会が多かったのは助かりましたね。出産後、親から「地元に帰ってきたら」と言われたのがきっかけで、茅ヶ崎に戻ることにしました。

 

−−改めて地元の魅力に気づかれましたか?

山口さん:茅ヶ崎には高い建物がないので、空が広いのが嬉しくて仕方ありませんでした。都内に比べると街も静か。静か過ぎて最初は寝れませんでした(笑)。茅ヶ崎に戻ってすぐのときは、子育ての情報が少なかったのですが、子どもの繋がりもあってどんどん人との交流が増えていきました。今は孤育てにならないようにという活動をしている人が増えてきているので私も応援していきたいです。「これをやってみよう」と思ったら、行政に頼らなくても自分たちでやっちゃおうという人が多いんですよ、茅ヶ崎って(笑)。街のサイズ感も集まるのにちょうどいいんです。

それに、何といっても自然です。海があれば一日遊べますし、茅ヶ崎には里山があるので、山の中の遊びもできます。大人も子供も自然が大好きですから。

 

茅ヶ崎に住む人の「やってみたい」をサポートしたい

−−2022年、2023年と、茅ヶ崎市の高砂緑地でイベント「茅ヶ崎とコーヒー」を開催。山口さんは実行委員長を務められました。

山口さん:このイベントは、日常とコーヒーとのつながりを強く感じたことがきっかけでした。茅ヶ崎がどんどん発展していく中で、その良さが残っているうちに街のことを知って欲しいと思ったんです。茅ヶ崎で暮らして、茅ヶ崎で仕事をしてみたいという人に来て欲しいと。

 

−−イベントで街にどんな変化をもたらしたいですか?

山口さん:やりたいことをやっちゃう人が多いとはいっても、やるまでの勇気は相当ですよね。こういったイベントを通じて、新しく茅ヶ崎に住むようになった人たちが「何かやりたい」と思ったときの後押しになれれば嬉しいですね。生活に慣れるのに寄り添いながら、「あなたも何かやりたかったらできるよ」とサポートしながら一緒にやっていけたら。〝おせっかい″がしたいです(笑)

 

−−その中で、山口さんはどのような役割を担いたいと考えていますか。

山口さん:茅ヶ崎はまだまだ開発されていく街なので、「私、これできます」といういろんな才能をもったまちづくりの仲間を増やしていきたいです。

 

次回は7/25(火)に公開予定です。
最終回は、改めて、山口さんが茅ヶ崎でのイベントを通じて伝えたいことや今後の展望について伺います。

 

– Information –
山口理紗子さん

生まれ育った茅ヶ崎で建築設計事務所「洋建築企画」に勤務しながら、chigasaki kodomo cinemaなど、地域の活動にも携わる。2022年、2023年とまち歩きイベント「#茅ヶ崎とコーヒー Tskasuna Greenery Coffee Festival」を主催。

 

ライター / 八田 吏

静岡県出身。中学校国語教員、塾講師、日本語学校教師など、教える仕事を転々とする。NPO法人にて冊子の執筆編集に携わったことからフリーランスライターとしても活動を始める。不定期で短歌の会を開いたり、句会に参加したり、言語表現について語る場を開いたりと、言葉に関する遊びと学びが好き。

Mo:take MAGAZINE > [Vol.2]人情がぎゅっとつまった街、茅ヶ崎。「海も山もある。空が広くて嬉しくなる」建築家/洋建築企画山口理紗子さん

Mo:take MAGAZINEは、食を切り口に “今” を発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、その時、その場所は、より豊かになるはず。

Mo:take MAGAZINEは、
食を切り口に “今” を
発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、
その時、その場所は、
より豊かになるはず。

みんなとともに考えながら、さまざまな場所へ。
あらゆる食の体験と可能性をきりひらいていきます。

みんなとともに考えながら、
さまざまな場所へ。
あらゆる食の体験と可能性を
きりひらいていきます。

さあ、いっしょに たべよう

OTHER SERVICE

様々な形で「食」が生む新たな価値を提供します。

ブランドサイトへ