SERIES
食を起点としたコト起こしの舞台裏
2023.06.08. | 

[Vol.2]この街がもっと好きになる!「人と人」「人と街」をつなぐ4つの仕掛け

「TAKASUNA GREENERY COFFEE FESTIVAL vol.2」のコンセプトは、「コーヒーと本を片手に日常を楽しむ」。2回目となる今年はエリアを拡張し、高砂緑地、たかすなビレッジ、南本通り商店街の3カ所で開催。さらに街の日常に溶け込んだ内容になりました。主催の「茅ヶ崎とコーヒー実行委員会」の山口さんと、たかすなビレッジ会場の運営でフェスをサポートしたonestopのメンバーが、企画段階から当日までの出来事を振り返ります。

3つの拠点で開催するフェス。一体感を出すには?

「会場を拡張したことで、どうやったらフェスの一体感を出せるかという課題がありました。」と話すのは、「茅ヶ崎とコーヒー実行委員会」の山口理紗子さん。

昨年のフェス会場は高砂緑地の1ヶ所だったのが、今年はコミュニティアパートメントのたかすなビレッジ、さらに地元商店街へと拡張。飛び地のようになった会場にどうやって一体感をもたらすかという相談が山口さんからonestop※に寄せられたのです。

山口さんからの相談を受けて、onestopチームはどんなことを考え、具体化していったのでしょうか。

※onestopは、商品やサービスを提供する事業者さまの課題を解決するため、顧客体験の設計〜場所選び〜クリエイティブ開発をパッケージにしたライトなポップアップサービスです。

 

大きなMAPの設置で、フェス全体をつなぐ「案内所」の役割を

「私たちが運営を担当したたかすなビレッジは、他の会場をつなぐ中間地点のような場所にあります。そこで、イベント全体の案内所のような役割を果たせるよう、大きなMAPを設置することにしました。」と話すのはonestopの大石七奈。

MAPは、現在地を示すとともに「この先にこんな面白そうなものがあるんだ。行ってみよう」と、来場者の行動をうながす役割もあります。実際、大きな看板の前で足を止めている人の姿が多く見られました。

山口さんの出店交渉と同時進行での制作だったとのこと。新たな出店者が追加になったり、変更になったりもある中、

 

大石:とにかく一ヶ月間はこのMAPを最優先して取り組みました。結果、お客さまにもたくさん見ていただけて、イベント全体のお役に立てていたことがとても嬉しいですね。

 

「好きな本」を通じて、人と人とがつながる

フェスの出店者さんは茅ヶ崎で活躍する個性豊かな方ばかり。そんな皆さんの「おすすめの本」を紹介するzineがフリーで提供されていました。

冊子を企画、制作したのは、たかすなビレッジ全体のイベント企画やプランニングを手がけたonestopの小倉巳奈です。

 

小倉:茅ヶ崎ってこんな人たちが住んでいるんだ、と街自体に魅力を感じたり、興味をもったりするきっかけになれば、と考えて制作しました。実際に作ってみて、イベント出店者同志のつながりも深まったんじゃないかと思います。ふだんのお仕事で一緒になることはあっても、本について語り合うことってたぶんないですよね。この人こんな本が好きだったのか、とか、あの本私も好きって言いに行こうかな、とか、そんなつながりが生まれるきっかけになったのではないでしょうか。

 

「好きな本」を通じて人物紹介をするというアイディアに、山口さんも

 

山口さん:茅ヶ崎の素敵な人たちを紹介できて嬉しかったです。本という切り口でその人の新たな一面を知れたのは面白いと思いました。

 

と振り返ります。

 

yarmbombingと一緒に展示されていたカードは、zineの内容をラミネートしたもの。気になる人や本があったら自由に持ち帰り可能。新たな出会いのきっかけにもつながったのではないでしょうか。

 

「本の虫」を探して縁日で遊ぼう!3つの会場をつなぐ仕組み

本を使ったもう一つのしかけが「ホンノムシムシ」。写真の通り、ミニチュアの本を読む小さな虫たちが、会場のあちこちに・・・

 

小倉:虫たちが読んでいる本は、zineで出店者さんたちにご紹介いただいた本なんです。

 

それだけでも十分楽しいのですが、

 

小倉:本を紹介してくれた人のいるブースのどこかに虫が隠れています。虫たちを見つけて写真で撮って、4枚集まると縁日で遊べる、というしかけにしました。子どもたちが出店者さんに『虫いますか?』とどんどん声をかけていて、そこでもコミュニケーションが生まれていましたね。

 

楽しいアイディアの主は、以前こちらの記事でご紹介したONE_THROWの東海林さんです。今回のフェスに出店した庄司さんが「何かインパクトのあることをしたい」と提案。ミニチュアの本も庄司さんの手作りなのだそうです。

 

茅ヶ崎の「松」をフィーチャーしたドリンクとフード

フェスではフードやドリンクも大きな楽しみの一つ。たかすなビレッジにはONE_THROW東海林さんのキッチンカーが登場。地域の特色を生かしたスペシャルドリンクやフードが提供されました。

前回の記事でもお伝えした茅ヶ崎の名物といえば「松」。フェス当日はなんと、松を使ったメニューが登場しました。

メニュー開発を手がけたのは、onestopの真下夏栄。

 

真下:実は松って、漢方薬にも使われるほど身体にいいスーパーフードなんです。茅ヶ崎では松葉をお茶やパウダーにして食べていると聞き、松食の普及に取り組む『吾輩は松であるぞ』さんにご協力いただいて、赤松ジントニックと牛串をつくりました。

 

「赤松ジントニック」は、オーガニックの松葉を使った「赤松茶」を5日間漬け込んだジンを使ってつくられています。ジンのすっきりした味わいと、どこかスモーキーな松の香りがぴったりです。

 

牛肉に松パウダーを練り込み、松塩をかけて焼いた「牛串」は、シンプルな塩味に濃厚な松の風味を加えることで、味わいを深めています。

 

真下:松の風味がいちばん出るのは加熱時。せっかくのフェスなので、縁日っぽいイメージで牛串を考えました。松の風味は濃厚ですが、他の調味料と合わさると消えてしまうので、シンプルに松と塩だけで仕上げています。

地元の人でも、『松が食べられる』ということ自体は知っているけれど実際どんな風に食べるのかは知らないという人が多いんです。フェスで食べてみて、こういう調理方法があるんだな、と知っていただくきっかけになれば嬉しいですね。

 

松フードの他にも人気だったのが「湘南みかん」を使った「湘南みかんラッシー」。以前こちらの記事でもご紹介したNPO法人湘南スタイルさんが手がける100%みかんジュースをゼリーにし、ラッシーと混ぜたさわやかなドリンクです。フェス当日、昼過ぎには完売となるほどの人気だったため、現在SWITCH STANDの店舗でシーズナルドリンクとして提供中です。

 

馴染み深い地元だからこそ、外部の目線で新たな魅力が見えてくる

イベントを振り返っての思いを聞きました。

 

小倉:今回感じたのは、茅ヶ崎という地域の、人のつながりの濃さです。たとえば、今回製作したzineも、最初、取材は3組しか決まってなかったんです。それが、山口さんの取材を終えて一緒に歩いていたら偶然出店者さんが通りかかって、山口さんが『いまこういう取材受けてたんだけど出てみない?』って声をかけてくださって。結局8組のみなさんに取材をさせていただきました。

yanbombingのumuさんも、最初インターネットで調べてぜひお願いしたいと山口さんに相談したら、『umuさん、お花屋さんとして出店予定なんですよ』と。あれはびっくりしましたね。

 

山口さん:umuさんのことを小倉さんが見つけてくれたのは、私もとても嬉しかったですね。イベントを通じて茅ヶ崎の隠れた魅力を見つけていこうという思いもあるので、今回、onestopさんが外の目線でご提案くださったことがとてもありがたかったです。

 

山口さん:いま、イベントをきっかけに出店者さん同士がつながって、新しい動きが生まれつつあります。今後は、関わる人をもう少しいろいろな切り口で増やしていきたいですね。学生さんが商店街のみなさんと何かをやるとか、きっとすごく面白いと思うんです。こんなに楽しいこと、私たちだけで独り占めするのはもったいないですから。

 

小倉:いろんな人たちが自由に自分のやりたいことをやっているし、お互いのやりたいことを応援しあう関係性のある街だなと感じました。そういう街の魅力を、外からの目線を踏まえて改めて掘り出すお手伝いを、今後もしていけたらと思います。

 

– Information –

onestop

ライター / 八田 吏

静岡県出身。中学校国語教員、塾講師、日本語学校教師など、教える仕事を転々とする。NPO法人にて冊子の執筆編集に携わったことからフリーランスライターとしても活動を始める。不定期で短歌の会を開いたり、句会に参加したり、言語表現について語る場を開いたりと、言葉に関する遊びと学びが好き。

Mo:take MAGAZINE > 食を起点としたコト起こしの舞台裏 > [Vol.2]この街がもっと好きになる!「人と人」「人と街」をつなぐ4つの仕掛け