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Food Experience Story
2026.09.30. | 

【Vol.3】「壁にぶち当たっている人」に来てほしい。QWSという“鍋”で生まれるもの|SHIBUYA QWS 米山孝生

SHIBUYA QWSでコミュニティマネージャーを務める米山孝生さん。

Vol.1では、「東急」という会社の名刺だけでは通用しなかった大阪での経験から、一対一で相手と向き合い、信用をつくっていく仕事のあり方について。

Vol.2では、子どもの頃の食の記憶から、大阪で人との距離を縮めた食卓、そして現在も大切にしている「食に勝るコミュニケーションのツールはない」という言葉について伺いました。

そして最終回となるVol.3では、米山さんが現在働く「SHIBUYA QWS」という場所について、あらためてお話を伺います。

55歳の時、「何をやっているのか分からないから面白い」と自ら手を挙げてQWSへやってきた米山さん。

着任した2020年10月は、新型コロナウイルスの影響で、人が集まることそのものが難しかった時期でした。

そんな状況から始まったQWSでの仕事は、その後、人が戻り、さまざまな出会いやつながりが生まれる中で、少しずつ変化していきます。

今では、企業や自治体、大学、スタートアップ、クリエイターなど、さまざまな人が行き交うQWSで、米山さんは人の話を聞きながら、「だったら、こんな人がいますよ」と誰かと誰かをつないでいる米山さん。

そんな米山さんが考える「人がつながる場所」とは、どんな場所なのか、そして、どんな人にQWSへ来てほしいと思っているのでしょうか。

今回は、コロナ禍から現在までのQWSの変化を辿りながら、人と人がつながることで何が生まれるのか。そして、米山さんがQWSという場所にどんな可能性を感じているのかを伺います。

平日でも10〜20人ほど。人が集まれないQWSから始まった

編集部:米山さんがQWSに来られたのは2020年10月。まさにコロナ禍の真っただ中ですよね。

 

米山孝生さん(以下、米山さん):そうですね。僕が来た頃は、平日でも利用者が10人とか20人くらいでした。土日はもっと少なかったですし、イベントも開催できたとしても、無観客でオンライン配信するようなものがほとんどでした。

 

編集部:当時は、仕事の仕方も今とは違っていたんですか?

 

米山さん:全然違いましたね。スタッフも今みたいに仕事が細かく分かれていたわけではなくて、ある意味みんな「何でも屋」みたいな感じでした。

それぞれ窓口としての役割はあっても、「自分はこれだけをやればいい」という状況ではなかったんです。まずは、この状況をどうやって乗り切るかを、みんなで考えながら動いていましたね。

 

編集部:人と人が出会う場所なのに、そもそも人が集まることができない。そんな状況だったんですね。そこから、少しずつ人が戻ってきたのはいつ頃だったんですか?

 

米山さん:2023年頃からですかね。少しずつ利用する人が増えて、法人の会員も増えてきました。オフラインのイベントもまた開催できるようになって、人がここで直接会う機会が増えていったんです。

 

編集部:人が増えてくると、QWSの中で起きることも変わってきましたか?

 

米山さん:変わりましたね。単純に人が多くなったというだけじゃなくて、ここで知り合った人同士が別の人を紹介したり、「こんなことで困っているんですけど」と相談された時に、「だったら、こういう人がいますよ」とつなげたり。そういうことが少しずつ増えていきました。

 

場所が賑わうことより、誰かの課題が動き出すこと

編集部:そういったつながりが増えていく中で、米山さんが「QWSがあってよかった」と感じるのは、どんな時なんですか?

 

米山さん:ここで出会った自治体や企業がつながって共創がはじまっていく時ですかね。実際に商品になったものもありますし、QWSの会員さんがここでの出会いをキッカケに、外で一緒に活動しているケースもあります。もちろん、そういうものが生まれるのは嬉しいですよね。でも、ここ自体に人がたくさん集まって、盛り上がればそれでいい、ということではないんですよね。

誰かが持っている課題に対して、解決につながる糸口が見つかったり、それが仕事や新しい発想につながったりする。人が集まった結果として、誰かが抱えていたものが少しでも前に動いていく。そういうことの方が大事だと思っています。

 

編集部:そうしたつながりは、どんなふうに生まれることが多いんですか?

 

米山さん:僕の場合で言うと、館内を案内しながら「この人は、ここで何をやりたいのかな?」「何か困っていることがあるのかな?」って、いろいろ考えながら話を聞いていると、「これをどうにかしたいんです」という具体的な思いが見えてきて、「それなら、こういう人がいますよ!」っていう流れでつないでいくことが多いですね。

もちろん、僕だけが誰かを紹介して生まれるものでもなくて、会員さんが別の会員さんを紹介することもあるし、「それだったら、この人に聞いた方がいいよ」と、そこにいる人同士で自然につないでいくこともある。どちらかというと、そういう動きが増えていく方が理想ですね。

 

来てほしいのは、「壁にぶち当たっている人」

編集部:米山さんはどんな人にQWSを利用してほしいですか?

 

米山さん:そうですね……。僕が来てほしいと思うのは、「壁にぶち当たっている人」かもしれないですね。やりたいことや、その先に行きたい場所はなんとなく見えている。でも、自分一人ではどう越えたらいいか分からない。そんな人ですね。

 

編集部:壁にぶち当たっている人?

 

米山さん:そうですね。僕がイメージしているのは、壁の向こう側は見えている人なんです。

向こうから光が差していて、「早くこっちに来なよ」と呼ばれているけど、「今の自分の力だけでは、この壁を越えられない」。僕が言う「壁にぶち当たっている人」って、そういう人ですね。

 

編集部:なるほど。先が見えていないわけではないということですね。

 

米山さん:そうですね。そういう壁にぶち当たっている時に、ここ(QWS)へ来れば、誰かが踏み台になってくれるかもしれないし、トランポリンになってくれれば越えられるかもしれない。人が重なって、「俺たちを踏み台にして行きなよ」ってできるかもしれないし、もしかしたら壁の向こう側から扉を開けてくれる人がいるかもしれない。

そうやって誰かが別のステージへ行ったら、「あいつが行けたなら、自分たちも行けるんじゃないか」と思う人も出てくるじゃないですか。

 

編集部:私の印象では、QWSには「やりたいことがたくさんあって、どんどん動いている人」に向いている場所なのかなと思っていました。

 

米山さん:もちろんそういう人もいますよ。そういう人はここに来ると、さらに「あれもできる」「これもできる」と広がっていくことがあると思うんです。「この課題をどうにかしたい」という具体的なものがある方は、つなぐ側としても分かりやすいですよね。

 

一人の困りごとが、まだ会ったことのない誰かへつながる

編集部:実際に、一人の身近な困りごとから始まったものが、その先へ広がっていった例もあるんですか?

 

米山さん:ありますね。最初は、身近な一人の課題を解決したいというところから始まった取り組みが、進めていくうちに、実は同じようなことで困っている人が世界中にたくさんいたと分かったケースもあります。

一人の課題を解決しようとしたことが、結果として、まだ会ったことのないたくさんの人にもつながっていく。そういうことってあるんですよね。

 

編集部:なるほど。一人の困りごとを丁寧に見ていくことで、その先に同じ課題を抱える人たちが見えてくることもあるんですね。

 

米山さん:そうですね。一人の課題だから小さい、ということではないと思うんです。そこを深く見ていくことで、実はもっと多くの人に共通するものだったと分かることもある。

 

共創は、きれいに混ざらなくてもいい

一人の困りごとに、別の誰かの知恵や経験が加わることで、思いがけない方向へ広がっていくこともある。

そんなQWSでのつながりについて話を伺ったあと、話題は再び「食」へと戻りました。
Vol.2では、誰と、いつ、どんな場で食べるかによって、食はいろいろな形に変わると話していた米山さん。

最後にあらためて、人が集まる場所と食について尋ねると、米山さんはQWSそのものを食にたとえて話し始めました。

 

編集部:改めて、人が集まる場所において、食にはどんな可能性があると思いますか?

 

米山さん:そうですね……。QWSって、ある意味「鍋」のようなものかもしれないですね。

 

編集部:鍋、ですか?

 

米山さん:何鍋とは言えないんですよ。寄せ鍋かもしれないし、石狩鍋かもしれない(笑)。

ここにはいろいろな人がいて、それぞれ持っている課題やアイデア、経験も違う。それが一つの場所に持ち込まれることで、日によって全然違うものが生まれる。鍋も、入れるものが変われば味が変わるじゃないですか。

中には、「この組み合わせは合わないかもね」ということもあると思うんです。でも、それも別に悪いことではない。悪かったら、お腹壊せばいいだけですから(笑)。

でも、「これはうまくいかなかった」と分かることだって、一つの発見じゃないですか。逆に、普通なら組み合わせないようなものでも、やってみたら意外と面白いかもしれない。

最初から「これじゃなきゃいけない」と決めずに、いろいろなものを試してみる。QWSって、そういうことができる場所なんじゃないかなと思います。結局、やってみないと分からないですからね!

 

編集部:なるほど。うまくいく組み合わせだけを最初から選ぶのではなくて、やってみて初めて分かることも含めて、この場所の面白さなんですね!本日はありがとうございました。

 

米山さんは長いキャリアの中で、人が行き交い、誰かと出会うさまざまな場に関わってきました。そして55歳の時に社内公募でQWSを見つけた時、「何をやっているのか分からないから、面白そう」と手を挙げてこれまで経験したことのない世界「QWS」へ飛び込みます。

大阪で「東急」の名刺が通じなかった時も、QWSで新しい仕事を始めた時も、最初から答えが見えていたわけではありません。人と会い、話し、ときには一緒に食べる。

米山さんがQWSを「鍋」にたとえたように、ここには異なる経験や課題を持つ人たちが集まります。誰かと出会うことで、それまで見えなかった次の一歩が見つかることもある。

だからこそ、米山さんがQWSに来てほしいと話すのは、「壁にぶち当たっている人」なのかもしれません。

「結局、やってみないと分からないですからね」

答えが見つかってからではなく、まだ答えが分からない時にこそ、人と出会ってみる。 SHIBUYA QWSという“鍋”は、そんなキッカケをつくってくれる場所なのかもしれません。

 

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米山 孝生 profile

SHIBUYA QWS コミュニティマネージャー。東京急行電鉄株式会社(現・東急株式会社)入社後、鉄道事業、リゾート事業、リテール事業などを経験。2020年10月より渋谷スクランブルスクエア株式会社へ出向し、SHIBUYA QWSの運営に携わる。現在は企業、自治体、大学、スタートアップ、クリエイターなど、多様な人や組織をつなぎながら、新たな共創が生まれる場づくりに取り組んでいる。

– Information –
SHIBUYA QWS

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

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文脈や背景を知ることで、その時、その場所は、より豊かになるはず。

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