SERIES
食を起点としたコト起こしの舞台裏
2024.08.30. | 

【Vol.2】生活者と作り手をつなぐ場所。 PASS THE BATON MARKET「米惣動」インタビュー

行き場のない商品とその背景を発信し、新たなサーキュレーションの創造に取り組む「PASS THE BATON MARKET」。Vol.1では、「古米」に着目し、ご飯のお供であるお惣菜の力を借りて、単なるもったいないではなく、美味しく古米を食べてほしいという想いが詰まった「米惣動」エリアの様子をお伝えしました。

Vol.2となる今回は、会場でずっと流れていた音楽の謎と、米惣動への想いについて現場で伺ったお話をお届けします!

「ライス トゥ ミーチュー」
まさかの米惣動オリジナル楽曲が登場!

飲食スペースでは、「米惣動」のテーマカラーに合わせた黄色のラジカセから、何やらずっとラップらしき音楽が流れていました。音に集中して耳を澄ますと、、

「古米 うまいのに 余りがち〜」

という声が聴こえてくるではないですか!まさかの、オリジナル楽曲!?これはお話を聞いてみるしかない!ということでPR担当の花摘(はなつみ)さんとプロジェクトマネージャーの内山さんを直撃しました!

 

−−ずっと気になっていたのですが、こちらのラップは一体なんでしょう?オリジナル楽曲ということを風の噂で聞いたのですが、こちらの楽曲を制作した背景について教えてもらえませんか?

花摘さん:このラップは、今回の開催にあわせて自主制作したテーマソングなんです!今、当社ではテーマソングを制作しがちで、今回、米惣動のテーマソングをどんな曲にしようか、どんなジャンルにしようかを議論していたんですよ。そうしたら会議中に、私の中で「ライスチェック、ワンツー」「ライス トゥ ミーチュー」っていうリリックが浮かんできたんです。

 

これはヒップホップでいくしかない!と。でも、ただ面白おかしくっていうことではなくて、この米惣動は、作り手、食べ手の垣根を超えたある種のムーブメントにしていきたいというひたむきな想いがあるんです。企画の根っこの部分がヒップホップの精神と通じるものがあると…!そうして作詞、作曲、レコーディングも全部社内のメンバーで制作した完全なオリジナル楽曲ができました。

 

−−すごくユニークな取り組みですね!でも、そこにはちゃんとした想いがあるというのが、いかにも御社らしいです!レコーディングも楽しそう。(笑)

花摘さん:そうですね、イベントの準備をしながら会社の倉庫でみんなでレコーディングしました。やっぱりこの「(古米をふくめた)お米をみんなで食べていこう!」というムーブメントは、「楽しい」って気持ちから、みなさんに参加してほしいと思っているんです。だから米惣動のことを伝えていきたいと思いながらリリックを作りました。バックミュージックもクリエイティブディレクターが作っていて、メインボーカルはうちの社長の野崎です。(笑)

 

−−「楽しい」という感情からまず興味を持ってもらう。でも趣旨をしっかりと伝えて多くの人を巻き込んでいきたい!そんなこだわりが感じられる素敵なエピソードですね。

 

古米=美味しくないという先入観を変えていきたい。
お米を惣菜の力で動かしていくムーブメントが「米惣動」。

−−曲が気になりすぎて、曲からのインタビューに入ってしまいましたけれど(笑)
改めて、ムーブメントにされたいという「米惣動」の企画について教えていただけますか?

花摘さん:まず、日本では新米がフィーチャーされがちですが、私たちとしては古米ももっと色々な方に味わっていただきたいと思っています。現在は保存技術もすごく良くなってきているのに、古米の価値を市場で見出してもらえていない状態なので、古米の先入観を変えていきたいなという想いがあります。

それに、お米の消費量が今、年々すごく下がっているんですよね。ライフスタイルが変化するのは仕方がないけれど、日本の農業において稲作が担う役割は大きく、様々なアプローチを通じてお米をみなさんに楽しんでいただきたいと考えています。
そのお米の“友達”としてお惣菜を引っ張ってきて、米惣動という形でムーブメントを起こしていこうというのがこの企画の趣旨です。そこで約100年前に富山県で起きた米騒動をひとつのとっかかりとして、お米を惣菜の力で動かしていく「米惣動」という企画名になりました。

 

−−確かに、今日古米を食べてみて、お米自体も改めて美味しいなと感じましたし、お惣菜の魅力も感じることができました!

 

“ご飯に合いそう”じゃなくて”ご飯に合う”を証明する場所へ。お米だけでなくお惣菜そのもののレベルが高い北陸。

−−今回のイベントを通じて、みなさんにどんな体験をしてほしいですか?

花摘さん:古米を実際に食べてみたいって感じてもらえるような状況をつくるということを、私たちは大切にしています。あと、よくお惣菜の試食コーナーって目にされると思うのですが、そのままお惣菜だけを試食することが多いですよね。そうすると、ちょっとご飯のせて食べてみたいって感じることがあるよね、と議論していたんです。
ここでは、“ご飯に合いそう”じゃなくて、“ご飯にすっごく合うよね!”ということをリアルに証明していく場として、生活者の方にも作り手さんたちにも喜んでいただけたらなと思っています。

 

−−今回は北陸編ですが、北陸を選ばれた理由はやはり米騒動が富山から始まったからですか?

花摘さん:そうですね。米騒動が始まった場所だというのももちろんありますし、やっぱり米どころであり、お惣菜もすごく美味しいものがたくさんあるので、この両方を打ち出すには北陸は外せない場所だなと、プロジェクトリーダーの内山を中心に社内で考えてきました。
お惣菜はアレンジも効くので、毎日忙しくされている方にも、日常的に北陸食材の魅力を感じてもらえたらという意味合いもあります。

また今回イベントでお配りしているタブロイド紙に掲載しているんですが、3分ちょっとでできるようなお惣菜のアレンジレシピを弊社の料理人たちと一緒に考えました。
でもそうした時短レシピが開発できるのは、北陸のお惣菜がそもそも美味しいからなんです。
惣菜をそのまま食べる以外の選択肢が生まれると、例えば普段なかなか佃煮を食べない世代の方とかにも楽しんでもらえるかなと企画しました。

 

−−もともとこの企画を発案されたひとりが、内山さんだと伺いました。素敵な企画ですね!しかも今回、米惣動に出店する北陸の事業者さんに1件1件お声がけをされて、現地にも足を運んだとのことですが、もともと北陸にはご縁があったのでしょうか?

内山さん:実は以前も別の場所で同じ企画を実施した際に、富山県へ訪問していたんです。そもそも米騒動の地でもあるし、グループ会社である「Soup Stock Tokyo」のお米が富山のお米を仕入れていたという縁もあったので、“お米のことなら富山に行かなきゃ”という感じでしたね。
あとは富山でフードディレクション系の仕事をしている人にお繋ぎいただいたりして、事業者さんに会いにいきました。石川県では別のマーケットで繋がりがあったところを中心に、もう一度お伺いしましたね。その他にも今回は、アンテナショップの方々にも事業者さんを紹介してもらったりと、おかげさまで色々なご縁で、そこから繋がりができていきました。

 

−−そういった丁寧なコミュニケーションを重ねて、繋がり一つひとつを大切にされてきたからこそ実現したんですね。

 

出店者さんの中には地震で被災された方も。
それでも、美味しいものを直接届けたい。

−−出店者のみなさんは、企画についてどんな想いを持たれていましたか?

花摘さん:今日は実際に古米を出してくださっている『たけもと農場』さんと、『川原農産』さんに出店いただいているんですが、古米に着目しているという点にびっくりしていただいてますね。
でも、皆さんこういう実験的な企画に対してすごく前向きで、どういう商品を持ってこようかと、一生懸命考えてくださっています。中には今年の地震で被災されている事業者さんもいるんですよね。でも、復興に向けての取り組みでお忙しい中、それでもやっぱり自分たちの手がけた美味しいものを、直接みなさんとお話ししながら食べてもらいたいという想いで今回出店してくださったんです。

 

−−この米惣動は、そういった想いで出店されている事業者さんを通して、北陸の味も震災のことも改めて知るきっかけにもなりますね。そんな、とても盛り上がりをみせた今回の北陸編ですが、今後は他のエリアでの展開もあったりしますか!?

花摘さん:米どころって日本にたくさんあるので、今後は他の都道府県さんともやってみたいですね。あとは例えばお米とお惣菜を違う県にするとか、コラボレーションみたいなこともやれたらと思います。一緒にやりたいっていう企業さんとか都道府県さんにこれから出会いたいですね!東京ですでに商品を販売されている企業さんでも、普段会えないお客様に知っていただける機会なので、生活者の方と作り手の方をつなぐ場所として「米惣動」を今後も発展させていきたいと思っています!

『「米」を「惣」菜の力で「動」かす!』をコンセプトに始まった「米惣動」。
その背景には古米の美味しさをもっと知ってほしい、多くの人に食べてほしいという想いがあります。でもそれを「どのように伝えるのか?」という点において、表現の豊かさに私は驚かされました。ただ想いを伝えるのではなく、その想いを受け取った方に「まずは楽しんでほしい」という願い。それは企画名に始まり、オリジナルラップや看板など、至る所に工夫として現れています。

 

そんなムーブメントに参加した一人として、「米惣動」のさらなる展開に加え、どんなコンテンツが生まれていくのか、これからも目が離せません!

 

– Information –
Smiles
PASS THE BATON

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

モッテイクマガジンでは、イベントのレポートや新しい食のたのしみ方のアイデアを発信します。そして、生産者、料理人、生活者の想いをていねいにつないでいきます。 みんなとともに考えながら、さまざまな場所へ。あらゆる食の体験と可能性をきりひらいていきます。

Mo:take MAGAZINE > 食を起点としたコト起こしの舞台裏 > 【Vol.2】生活者と作り手をつなぐ場所。 PASS THE BATON MARKET「米惣動」インタビュー

Mo:take MAGAZINEは、食を切り口に “今” を発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、その時、その場所は、より豊かになるはず。

Mo:take MAGAZINEは、
食を切り口に “今” を
発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、
その時、その場所は、
より豊かになるはず。

みんなとともに考えながら、さまざまな場所へ。
あらゆる食の体験と可能性をきりひらいていきます。

みんなとともに考えながら、
さまざまな場所へ。
あらゆる食の体験と可能性を
きりひらいていきます。

さあ、いっしょに たべよう

OTHER SERVICE

様々な形で「食」が生む新たな価値を提供します。

ブランドサイトへ