2021.11.23. | 

[Vol.2]無駄なことなんてない。いつか必ずお互いの経験を生かせるときがくる シモキタシマイ 中村典さん、中村真さん

姉妹で「美味しい!」をつくり出している、シモキタシマイの中村典さんと中村真さん。とても仲良しのおふたりですが、はじめから一緒に働いていたわけではなく、お互いさまざまな経験を積んだのちに、今のお仕事を始められたといいます。シモキタシマイを立ち上げる前にそれそれが経験してきたこと、その後おふたりで起業することになったきっかけについてお聞きしました。

目指したのは「食」関連ではない職業

洋菓子・料理研究家として働くお母さまの姿を見て育ち、「食」に関わる仕事が身近にあったおふたりですが、目指したのは「食」とはかけ離れた職業でした。

 

中村典さん(姉):高校、大学と母から洋菓子や料理のレッスンを受けていましたが、その道には進みませんでした。中学生の頃、父の単身赴任先であったフィリピンを訪れる機会がありました。そこで色々な境遇にいる方々を目にする中で、いつか途上国開発の仕事に就きたいと思うようになりました。

発展途上国のなかでも特に惹かれたのがカンボジア。友達との初めての海外旅行がカンボジアだったのですが、「こんなに美しい自然や人間が手がけた人工物がこの世に存在するんだ」と感動しました。また、カンボジアというと、メディアでは「貧困」のイメージが強く打ち出されることが多いですが、実際には幸せに生活している心の豊かな人々もたくさんいることに驚きもありました。東京生まれ、東京育ちの自分とはまったく違う価値観に触れ、大きな衝撃と感銘を受けましたね。そんな経緯もあって、もっとカンボジアのことを体系的に学びたいと思い、大学院ではカンボジアの低所得者が多く携わる魚醤油生産コミュニティーを研究対象に、調査をしていました。

 

中村真さん(妹):私も同じく母からレッスンは受けていましたが、「食」に関わる職業に就こうとは考えておらず、大学では建築や空間デザインを学びました。父がずっとそういった仕事に携わっていて、実は「シモキタシマイ」の店舗がある一軒家も建築家である父が設計したんです。その姿を近くで見ていたからか、いつの間にか建築に興味を持つようになっていました。

 

姉は海外、妹は広告の世界へ

学校卒業後もそれぞれ別の道へと進みます。

 

中村典さん(姉):大学院での学びより、カンボジアへの関心がいっそう強くなりました。学んだことを活かすためにも卒業したらすぐにカンボジアへ行こうと考えていたのですが、将来的にビジネスの興味もあるならば、まずは社会人としての一般的なスキルを身につけるのも大事だという周囲の方からの助言もあり、国内のIT企業に入社し、国内外の子会社立ち上げに携わりました。

IT企業での仕事はすごく楽しくてやりがいもあったのですが、一方で早くカンボジアへ行きたいという気持ちも強くありました。そこでご縁があって転職をし、政府系機関の専門家としてカンボジアで5年間働きました。

 

中村真さん(妹):私はデザインつながりで広告の表現や見せ方に興味を持つようになり、卒業後は採用に特化した広告のデザインやコンサルティングを行う会社に入社しました。

しかし、私が働き始めて2年目に入った頃から、10年ほど癌を患っていた母の病状が芳しくないとわかったんです。母とまったく同じ道に進もうとは思っていなかったものの、漠然とどこかのタイミングで母がやってきたことを引き継ぎたいという気持ちはあったので、母の命があるうちに技術を学びたいと考えました。ただ、仕事が忙しく、その時間を確保できそうもなかったため、働き方を変えようとIT広告企業に転職しました。

ふたりで母の店を守っていく
シモキタシマイの立ち上げ

中村真さん(妹):そこから1年ほど、平日は会社員として働き、土曜日は製菓学校に通い、日曜日は母とお店を開けるという日々を送りました。社会人になってから、母と過ごす時間はほとんどなかったので、とても楽しかったですね。そのなかで、洋菓子や料理に関わる仕事をやっていきたいという気持ちも芽生えました。

母が他界したのは私が製菓学校を卒業した翌々月でした。実は母が他界する3日前に父が他界しており、悲しい出来事が続いたのですが、その翌週にはお菓子の注文や母が担当していた紙面の連載の締め切りがあるなど、休む間もなく母が受けていた仕事が待っていました。さすがに会社員を続けるのが難しくなり、好きな仕事ではありましたが、会社を辞めて母のお店を引き継ぐことにしました。

2年間ひとりで営業していたのですが、姉がカンボジアから帰国するタイミングで、父と母が残してくれたものをどう引き継いでいくかを改めて話し合い、1年の構想期間を経てシモキタシマイを立ち上げました。

 

中村典さん(姉):思い返すと、この3年間は激動でした。ただ、シモキタシマイを立ち上げる前にお互い別の場所で様々な経験を積めたのは、とてもプラスになっていると思います。実は学生の頃、いつか自分たちの手で母のお菓子屋さんをなんらかの形で引き継いでみたいという話は、妹と時折話していました。当時はいつ実現するか未定でしたが、今こそ、お互い培ってきた学びを生かせる時がきているのではないかと思います。

 

次回は11/25(木)公開です。「やりたいことがたくさんある」と目を輝かせるおふたりに、シモキタシマイのこれからについてお聞きしました。(つづく)

 

– Information –

シモキタシマイ
東京都世田谷区代沢4-15-2
<火〜土>11:00-18:00

HP:https://sister-norimana.shopinfo.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/shimokitashimai/
Instagram:https://www.instagram.com/shimokitashimai.cafe/

ライター / 上條 真由美

長野県安曇野市出身。ファッション誌・テレビ情報誌の編集者、求人広告のライターを経て、フリーランスとして独立。インタビューしたり、執筆したり、平日の昼間にゴロゴロしたりしている。肉食・ビール党・猫背。カフェと落語が好き。