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Food Future Session
2023.03.30. | 

[Vol.2]二人で取り組む持続可能な島づくり。軸は、農業と観光。【Tobase Labo × Mo:take】

「Food Future Session」という壮大なタイトルで展開する、×Mo:takeの座談会。今回は、熊本県の八代海に浮かぶ戸馳島(とばせじま)で「100年後も持続可能で魅力溢れた唯一無二の島作り」を目指している「Tobase Labo(トバセラボ)」の中川裕史(なかがわ・ゆうし)さん、下田恭平(しもだ・きょうへい)さんとMo:takeの小野正視の座談会です。Vol.2では、アボカド栽培以外のトバセラボの事業、そして中川さんと下田さん、二人の関係性についてもお話をお聞きしていきます。

市の“負の遺産”「花の学校」を観光の拠点にする

小野:トバセラボはアボカド栽培以外にも事業をしていますよね。その内容や、目指しているところをお聞かせください。

 

中川さん:トバセラボは、農業と観光という二つを軸にやっていこうと計画を立てています。

農業はアボカドとパッションフルーツ、イチゴ、バニラビーンズという、熱帯果樹寄りの作物の栽培です。

観光で今やれているのは、熊本市内から一番近い若宮海水御浴場でのマルシェのイベントぐらいですが、今、海水浴場の隣にある「戸馳花の学校」という洋ランを展示・販売する施設を市から借り上げる方向で話を進めています。花の学校は戸馳島のある宇城市の施設で、長い間赤字経営が続き、2022年3月末で閉園しました。

 

小野:花の学校を借り上げる話は、トバセラボの方から「やらせてください」と手を挙げたのでしょうか。

 

中川さん:行政は、2026年度までに民間に譲渡するか更地にするかという方向を決めていて、僕がやりたくて手を挙げています。僕が戸馳で観光をするのなら絶対に花の学校を拠点にしなければと思っています。それぐらいポテンシャルがあると思っているんです。

 

小野:中川さんとしては、ここをどう活用して何をやりたいと思っていますか。

 

中川さん:この場所を拠点とした仲間作りから始めたいと考えています。2階がオフィスっぽいフロアなので、トバセラボの思いに共感してくれる事業者さん、例えばアート系や体験系のアライアンスパートナーに入っていただきたいなと思っています。

水族館や動物園、遊園地といった子どもの時の思い出って、大人になってもまた行きたいなと思いますよね。花の学校がそんな魅力ある場所になればいいなと思っています。

 

夢を熱く語り合える貴重な仲間
お互いにない強みを生かして

小野:下田さんが何をやりたいかという話を、中川さんとの出会いも交えてお聞かせください。

 

下田さん:中川が僕の前職の会社の人に、「町おこしをしたい」と相談して、その人と一緒にやる予定でした。だけど「せっかくなら若者でわちゃわちゃやったらどうか」と4年前に紹介してもらったのがきっかけです。

僕は民泊の立ち上げや、長屋をリノベーションする事業を個人でやっていたので、最初は古民家を改装して民泊からスタートしようということで関わっていたのですが、民泊の話から、いつのまにか「今度マルシェをやりたいんだ」とか「トバセラボのロゴを作りたい」という話をちょこちょこ振ってくれるようになりました。やっていくうちにどんどん熱が入り、いつの間にかトバセラボの一員として動いていました。

戸馳は人口の規模も小さいですが、同級生も全員都内に出ちゃうので、島では彼一人で頑張っているんです。僕も東京に出ましたが、熊本が大好きで戻ってきたくらい郷土愛が強いので、彼を手伝っているうちに4年が経っちゃいました。

 

小野:中川さんは、下田さんにどんなことを期待して一緒にやろうと思うようになったのでしょう。

 

中川さん:私は農業しかできません。強みと言えば栽培技術を知っているくらいです。彼は自分にない部分をやってくれて、痒いところに手が届く人間なので、何か頭に浮かんだら彼にハイってパスしています。

もう仕事を超えて友達に近いですね。同級生や友達に「こういうことをやりたい」と話しても鼻で笑われたり、「夢みたいなこと言って」と言われるところを、彼とは夢の話をすごく話せて、その延長でトバセラボをやっている感覚です。

 

下田さん:僕らZ世代は安定や自由を求めている人が多いので、何千万円借りて一気に増やす、みたいな昭和的な人間はものすごくレアなんですよ。なので彼に魅了されちゃって。自分が持っているのは小さい武器ですが、それで何とか遊びの延長線上でお手伝いしてきたような感じです。

 

アボカドは、苗を増えてから収穫まで5年
その間の収益をどうするか

小野:二人で語りながら楽しみながらやってきたとは思いますが、今感じている事業の課題感を教えてください。

 

中川さん:やはり資金繰りは大変です。アボカドは実がなるまでに5年間かかります。収穫できるまでのリードタイムが長い作物を扱っているので、すぐに結果は出ません。一方で、光熱費や家賃など出費は毎月かなり大きいので、それをやり繰りするための事業を設計するのが大変です。

土地は空いていますが、新しく開拓して作物を植えてというところに時間がかかるのでどんどん奥手になり、いいタイミングでいい投資ができていないのが辛い部分です。打開策として、すぐに収入源になるイチゴを始めましたし、サトウキビも始める計画です。

 

小野:リードタイムが長いけれど単価が高いもの、短いけれど恒常的に資金が回るものを上手に組んでいきたいということですね。

 

中川さん:もっと早くに気づいてやっていけば良かったのですが、昨年5月までは父の会社の洋ランの事業も一緒にやっていたので、そこまで手が回らなかったという事情があって。ようやく自分の事業に集中できるようになったので、課題に向き合うことができ始めました。

 

次回は4/4(火)に公開予定です。
二人と小野との出会い、関係性や二人が1年以上に渡り、小野との定期ミーティングを続けている理由などについて語っていただきます。
(つづく)

 

– Information –
Tobase Labo

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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