SERIES
コーヒースタンドを起点とした場づくりの舞台裏
2022.09.15. | 

[Vol.2]圧倒的な自然の魅力に気づき、ビルの設計の仕事を辞めた【VILLAGE INC. 茶屋尚輝×Yuinchu 小野】

“日本一のモグラ駅”の愛称で知られるJR上越線の「土合(どあい)駅」(群馬県みなかみ町)に2021年春オープンしたグランピング施設「DOAI VILLAGE(ドアイ ヴィレッジ)」。運営する株式会社VILLAGE INC.(ヴィレッジインク)のマネージャー、茶屋尚輝(ちゃや・なおき)さんは、元々、建築の仕事をされていました。なぜ、キャンプ場の運営をやろうと思ったのか、そして、VILLAGE INC.が運営している他の施設についてもお聞きします。

“何もない”西伊豆のキャンプ場に魅せられて

ーー茶屋さんは、VILLAGE INC.に転職する前、建築の仕事をされていたと聞きました。

 

茶屋さん:もともと人を呼んでもてなすのが好きだったので、人が集まっている温かいシーンを作り出せる住宅の設計をしたいと思い、設計の道に進みました。でも、希望通りの住宅の設計事務所に入ることはできず、ゼネコンに入って大きな建物の図面を描くことになりました。人が集まる最小単位の住宅を設計したいと思っていたのに、真逆になりましたね。

 

ーー建物の設計をしていた茶屋さんがVILLAGE INC.に転職して、キャンプ場の運営へと舵を切ったきっかけを教えて下さい。

 

茶屋さん:友達とキャンプによく行っていて、ちょっと変わったキャンプ場を探していたところ、VILLAGE INC.の創業のキャンプ場、西伊豆の「AQUA VILLAGE」を見つけて予約をし、遊びに行ったんです。

そしたら、「荒地」とは言い過ぎですけど、何もなかったんです。普通のキャンプ場には、管理棟やトイレ、シャワーボックスなんかがあると思うんですが、そこはただの空き地でした。トイレは使えるようになっていましたが、水回りも決してキレイと言えるものではなくって。

でも、それまで東京で色々なモノや、五感を刺激する情報があふれる環境にいたからでしょうね。ほぼ何もない状態だったことですごくリセットできたというか、ものすごい開放感を味わったんです。

同時に、アテンドしてくれた今のうちの社長に人をぐいぐい引き込む雰囲気があって。そういう魅力があれば、建物がなくてもいいのかな、建物や箱に縛られていたのかもしれないな、と考え始めました。

 

「こういう人間でありたい」と思わせてくれた社長との出会い

ーーそこですぐに、VILLAGE INC.に入られたのですか?

 

茶屋さん:春に泊まりに行った時には、なんとなく面白そうだなと思っていた程度でしたが、秋にもう一度行って社長の橋村和徳と話しているうちに、やっぱり面白そうだな、これは間違いないと感じたんですよね。

自分が田舎出身で東京にあまり魅力を感じていなかったので、いつか自分でも店をやったり、自分の空間を作って人をもてなしたりしたいなと思っていたこと。そして、8年働いて、色々考え出したタイミングだったことも大きいですね。

 

ーーぜひ、茶屋さんを引き込んだ社長の橋村さんの魅力を教えて下さい。

 

茶屋さん:人をワクワクさせるんですよね、常に。相手の身分も年齢も何も関係なく、誰をもワクワクさせる感じが飛び抜けています。ワンピースのルフィーみたい、と例える人もいますが、小難しいことを考えずに何か一緒にやりたい、と思わせる力のある人ですね。

建築の仕事をしていた時は、仕事終わりや休日に友達とご飯食べに行っても、お互い仕事の愚痴しか出てこなくって、「今の状態は良くないな」と思っていたんです。それに比べて橋村は面白いことしか考えていないというか、もう上しか見ていない向上心の塊のような人で、「ああ、こういう人間でありたいな」と思ったんです。

ちょうど2回目に泊まりに行った時が、隣の土地にもう一つの拠点を作ろうとしているタイミングだったので、そこから入社させてもらって、橋村と自分とで1拠点ずつ運営していった感じでした。それが2012年ですね。

 

そこだけでしか味わえない、特別な体験をしてほしい

ーーAQUA VILLAGEの隣にできた2つ目の拠点、REN VILLAGE(レン ヴィレッジ)はどんな場所ですか?

 

茶屋さん:伊豆半島の陸続きの海の入江にキャンプ場があります。車での乗り入れができないので、お客さんを船で渡しているんです。1日にひと組だけしかお客さまを取らないので、自分だけで遊べるプライベートな空間です。「大人の秘密基地」というサブタイトルをつけているのですが、まさに秘密基地として2日間貸切で遊べる大自然ですね。

180名は泊まれるほどのキャパがあるので、夏場の週末などは60、70名でいらっしゃる団体利用も多いですね。一番多いのは、20人程度で利用する方たちでしょうか。

 

ーービーチを自分たちだけで貸し切るって贅沢ですね。VILLAGE INC.が運営している西伊豆以外の拠点について教えて下さい。

 

茶屋さん:九州には3拠点あります。1つは佐賀県で、県営のキャンプ場をリノベーションして指定管理を請け負っている「波戸岬キャンプ場」です。ここは1日ひと組とは逆で、何組もお客様が入られるオートキャンプ場です。九州で一番稼働しているキャンプ場になっていると思います。

2つ目は、福岡県の糸島半島の先の方にある小さなビーチが付いたのキャンプ場「KARADOMARI VILLAGE(カラドマリ ヴィレッジ)」です。こちらも何組も入れるオートキャンプ場なんですが、それぞれ個別の時間を過ごしてもらうというよりは、スタッフも一緒にコミュニケーションを取ったり、スタッフが大きな※インディアンティピーでフリードリンクのバーをやったり焚き火をしたりするので、そこでお客さんたちが交流するような場所です。

もう一つ今年オープンしたのが、福岡県うきは市の古民家の「うきは酒宿 いそのさわ」です。日本酒の酒蔵の創業一族が住んでいた古民家なので、宿泊客は日本酒の酒蔵見学もできますし、その酒蔵の日本酒は飲み放題なので、日本酒好きな人にはたまらないと思います。

 

ーーそれぞれに違う魅力があって素敵ですが、いずれにも共通しているコンセプトや大事にしているところを教えて下さい。

 

茶屋さん:最初はキャンプがメインだったので、自然の中で原体験に近いものを提供したいと思っていましたが、最近は建屋も増えてきました。それでも、お客様に特別な体験をしてもらう、本当に楽しい体験を持ち帰ってもらえることを大切にしている点は変わりません。

 

※インディアンティピー…ネイティブアメリカンに由来する、円すい形のテントのこと。

 

次回は9/20(火)に公開予定です。株式会社Yuinchuの代表・小野正視さんにも登場願い、お二人の出会いを振り返りながら、土合駅にある「駅茶mogura(エキッサモグラ)」とコーヒースタンドについて語っていただきます。(つづく)

 

DOAI VILLAGE
WEB/Instagram

株式会社VILLAGE INC.

WEB/Instagram

 

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

Mo:take MAGAZINE > コーヒースタンドを起点とした場づくりの舞台裏 > [Vol.2]圧倒的な自然の魅力に気づき、ビルの設計の仕事を辞めた【VILLAGE INC. 茶屋尚輝×Yuinchu 小野】