SERIES
Food Future Session
2022.03.15. | 

[Vol.4]Mo:takeが得意とする楽しい食体験で、家庭の中も変えに行こう!【界外亜由美×Mo:take】

「Food Future Session」という壮大なタイトルで展開する、×Mo:take の座談会。
今回は、Mo:takeとの関わりが長く、Mo:take MAGAZINEの食コラムでもおなじみの界外亜由美(かいげ・あゆみ)さんとの対談です。

界外さんがインタビュアーになってMo:takeの小野正視と坂本英文にインタビューしたのは2020年5月。初めての緊急事態宣言が出され、飲食店の営業自粛や営業時間の短縮など、新型コロナウイルスの影響が広がった時でした。

対談の最終回は、界外さんが「ぜひ2人にお話したかった」という装置から、話が展開していきます。そこから見えてきた新たな可能性とは?

「みんなでやる」を実現する楽しい仕掛け

界外さん:ちょっと面白いものを見つけたのでお話しさせてください。ある料理研究家さんの記事で、その方が開発したおもしろい装置を見かけたんです。これまでの自宅のダイニングテーブルの概念を覆す食卓なんですが、真ん中にIHクッキングヒーターがあって、シンクと食洗機もテーブルにくっついているんです。

テーブルとキッチンが一緒になっているので、「ここで食事に参加する人は、調理や片付けも一緒にやるんだよ」ということが場から伝わってくるんです。理科室もそうですよね。各机ごとに実験用のシンクがあって、「見てるだけじゃなく、みんなで実験をやるんだよ」と伝わってくる。それと同じです。

 

坂本:なるほど!

 

界外さん:「協力してやりましょう」とわざわざ声をかけてキッチンに集まってもらうのではなく、この設備があることで、言わなくても「みんなでやるんだな」とわかるんですよ。これからの家庭にはこういうものが必要じゃないか、ということだと思うんです。

 

小野:うわあ。面白い。

 

界外さん:そしてこれはそんなに大きなサイズのテーブルではないので、今ここでできるサイズ感で日々の食事を回せばいいじゃない、という提案でもあるんですよね。

 

小野:「家庭料理は回せる範囲でやる」という界外さんの理論が入ってますね。

 

界外さん:いま、家庭内で家事をシェアしましょうという話になった時、「みんなでやるべきでしょ」と語気強めに言っちゃう感じがあるんだけど、人はそういうことでは動かないんですよ。この設備がある家で子どもの頃から育つとしたら、すごく意味があると思うんですよね。 

 

小野:これ、何がすごいって食体験を楽しもうとしているところですよね。ただ単に時間を短くして、ラクをしようと言うわけではなく。

 

界外さん:そうそう。みんなで食べるなら、その前後にある準備も片付けもみんなでやるというのは至極当たり前なんですよね。それがやりづらい環境になっていないか、という新しい捉え方なんだと思うんです。

 

楽しい食体験には
人を“うっかり”動かす力がある

小野:ある意味、本当に人の行動導線、思考回路ごと変えに行こうとしてますよね。

 

界外さん:今日、小野さんや坂本さんと話したことにも近いなと思っているんですが、ラボの在り方もやっぱり同じじゃないですか。環境の方から「ここはこういう場所だよ」と働きかけてくるという点で。

 

小野:「開かれた場にコーヒースタンドという機能がある」というHYPHEN TOKYOの発想と近い気がしますね。カフェをもっと広い範囲での「場」と捉えてほしいんですよね。

作る機能と食べる機能が一緒になるから楽しい、と思った時に、オーナーがカフェを作るという経営的な部分と、その場をみんなに開放したい、というのが切り離されすぎて、どちらかが大きくなるとどちらかがうまくいかない。その距離が近い方がいいな、と感じていたので、作る、食べる、片付けるという行為が一緒になっているのは、僕と考え方が近いなあと思います。

 

界外さん:そうそう!それに、Mo:takeさんのケータリングってそもそも、こういうことをやっていたじゃないですか。参加した人に作業してもらったり、料理の仕上げをしてもらうって仕組みをつくっていましたよね。一緒に何かをするという共同体験で仲良くなる、それによって商談が進んだり、ほしい結果を得るという。

 

坂本:仕掛けをどうやって作るかなんですよね。

 

界外さん:2人は事業をやっているから事業の中で考えているけれど、家の中でも同じことができるなって気がついちゃったんです。

 

小野:アイデアや発想は同じなのに、これを食卓に持ってきたのはすごいですね。

 

界外さん:それこそ、みんなの共同作業で最後食べられるところまで仕上げることを目的にした献立に変えてもいいかもしれないですね。

こうやって上手に仕組みを開けば、家庭での家事シェアとか子どもの食をどうするかといったことを、一気に楽しく解決しちゃう可能性がありますよね。これって、Mo:takeがやってきたことの家庭版だと言える気がします。

 

坂本:ラボでちょっと強力な仕掛けを作って「一緒に研究しよう」と言ってる感覚と、こういった装置が家庭にあるというのは一緒かもしれないですね。

 

界外さん:これを置いておいたらみんなが始めちゃうでしょ、と楽しい力でうっかりそうさせてしまう仕組みを作るという、行動デザインだと思います。

2人が事業でやっていることと家の中の変化って、実は同じベクトルで起こせることがある気がします。環境から変えられることっていっぱいあると思うんです。

 

小野:これは本当にMo:takeだ!ありがとうございます。これを気づきにして、もっと良くしていこうと思います。

 

家庭内で食を“開く”
新しいコミュニケーションの形

界外さん:最後に「コロナで食は変わったか」について話したいです。これまでは、食事について、家の中で思い通りにならなくても、外にエネルギーが向かっていたから気が済んでいた部分があるけれど、コロナ対策でメインの場所が家の中になって、改めて考えざるを得ない状況になってきていると思うんです。

 

小野:これからそのお手伝いをしていくのが僕らなんだな、と考えると、今ものすごい光を見出しているような感覚です。

 

界外さん:家族全員、毎食家で食べるとき、自分だけがメインになって準備や調理、片付けを回していくのは難しい。どうにかしてこの仕組みを変えなきゃいけない状況になり、はじめて、それまで自分のこだわりで家族をキッチンに入らせていなかったことが浮き彫りになりました。何がどこにしまってあるかわかりづらいし、使うのが難しいこだわりの道具もたくさんある。私、家事はみんなでシェアすべきだって思ってきたつもりなんですけど、本当は、家族に料理をやらせたくなかったのかもしれない。だけど、本当に大事なことって何だっけ、と考えた時に「ダメだ、この役割や場所を開かないといけない」と思ったんですよ。料理好きでこだわりの強い人をやっててもしょうがないと。

日本の人口が少なくなっているという社会的視点からも必要だなと思います。

 

小野:食こそ自分から楽しむ、という感覚はすごく大事ですよね。自分が楽しもうとしていなかったら無理ですしね。

 

界外さん:疲れていて、料理をしたくない日は、どこかで「やらされてる」と思ってたけど、裏を返すと家族から料理の体験を取り上げていたんです。みんなが使いづらいこだわりの道具や調味料をズラっと並べたり、健康のために追い詰められてはいけないんです。

 

小野:まさしく、その話に戻りますね。

 

坂本:家族の真ん中に料理がある。本当に新しいコミュニケーションの形かもしれないですよね。

 

界外さん:2人はずっと「食はコミュニケーションポイントだ」とおっしゃっていますが、家庭の中の食もそうなんですよね。作る人と食べる人を分けた形で今まできて、それがもう実情に合ってないのに、なんでみんなシフトしてないんだろう、と気づいてしまった。

 

小野:なんだか、急激に使命感が出てきました。

 

界外さん:こういうことを発信できるコンテンツもMo:take MAGAZINEにあったら面白いなと思います。「食べる」以外の部分も含めて家庭内の「食」を開く。それが課題解決になっていくことを伝えられたら。

 

小野:やりましょう、ぜひ! 

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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Mo:take MAGAZINEは、食を切り口に “今” を発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、その時、その場所は、より豊かになるはず。

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みんなとともに考えながら、さまざまな場所へ。
あらゆる食の体験と可能性をきりひらいていきます。

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