SERIES
小さな循環を可視化する人たち by FARM SPOT
2024.09.25. | 

食とコンポストを起点とした新たな場づくり。 品川区とSDGsがテーマのイベントで起きた“小さな循環”。

コンセプトに合わせたケータリングを通じて“忘れられない体験”の提供を目指すMo:take CATERING。9月6日に開催された品川区主催のSDGsをテーマにしたイベント「しながわSDGs共創推進プラットフォーム」のキックオフ交流会で、「小さな循環」をコンセプトにしたケータリングを提供しました。

今回のこのケータリングに全面協力してくれたのは、Mo:take MAGAZINEでプロジェクト発足時に紹介をした「コンポスト」を起点とした場づくりをする『FARM SPOT』(シリーズ:小さな循環を可視化する人たち)。会場には『FARM SPOT』のメンバーとして活躍する、土壌の専門家チーム「DOJOYラボ」代表・ヨサクファームの愛敬さんの姿も。

今回は、イベントのテーマに寄り添った食体験を提供すべく、農薬・化学肥料・除草剤を使わず、生ごみなどの堆肥を活用して野菜を育てる有機農家のDOJOYラボの野菜を使用。Mo:takeとFARM SPOTの連携により、「小さな循環」をテーマにしたケータリングを提供しました!私もそんなコンセプトのケータリングをこの目で見ようと取材にうかがってきました!

SDGs未来都市・品川区で「小さな循環」を感じてもらう食体験。

品川区では、5月に内閣府が募集するSDGs未来都市と、自治体SDGsモデル事業にダブル選定され、企業やNPOなどのさまざまなステークホルダーを巻き込み、区の行政だけでは解決できないような社会解題を、力を合わせて解決することを目指しているそう。

今回の「しながわSDGs共創推進プラットフォーム」のキックオフ交流会」では、業界を超えて、品川区、企業、団体の方々がつながるためのキックオフイベントとしての位置付け。品川区にオフィスを構えていたり、区の事業に関わる企業や団体などから、なんと100名以上の方々が出席されました!

会場は森澤区長の爽やかな挨拶に続き、参加企業や団体の紹介、区が抱える課題についてのピッチも行われ、出席者同士の交流も活気にあふれていました!

 

そんなイベントの最中、会場後方に設営されたケータリングスペースを発見!
DOJOYラボさんが生産した野菜を使ったフードがずらっと並んでいます。

フードメニューは、4種類をご用意。

・茄子とドライトマトのタルタルのカナッペ
・生ハムとポテトグラタンのピンチョス
・オクラのベニエとガーリックシュリンプのピンチョス
・万願寺唐辛子とピーマンのピリ辛トルティーヤロール

どれも一口サイズで、お話ししながら気軽に食べられそうなサイズ感。
参加者のみなさんも交流を楽しみながら手を伸ばします。

 

さて、今回のケータリングのテーマは「小さな循環」。

茄子やトマト、ジャガイモにオクラ、ピーマンなど、色々な野菜がお料理に使われていますが、この野菜は全て「循環野菜」といわれるもの。

野菜を提供している飲食店から持ち帰った生ごみや料理に使えない野菜の葉や茎を使って、豊かな土を育て、美味しいお野菜を育てるのが、DOJOYラボさんの農業。DOJOYラボさんは、こうしたプロセスで生産された野菜、いわゆる「循環野菜」で、生ごみが堆肥になることや野菜のことを「知るきっかけ」をつくるイベントなどもされていて、地域の中で循環するようなコト起こしもされているんです。

 

今回フードの横に展示されていた野菜は、色鮮やかでハリがあって、みずみずしいお野菜がぎっしり。ピーマンやオクラ、唐辛子は濃い緑色で、輝いています!食べ残しなど、これまで生ゴミとして捨てられるのが当たり前となっていた食べ物が、堆肥に変わり、こうして無駄になることなく、また生命力に満ちた新鮮なお野菜に生まれ変わっているんだと、実際に見せてもらうことで実感が湧いてきました。

 

リアルな体験で“堆肥”を知るきっかけに。

そして今回、会場には生ごみが堆肥になるまでの過程を見てもらおうとDOJOYラボの愛敬さんが、生ごみが堆肥になる過程の各段階のサンプルを持参してくれました。

会場に足を運ぶ参加者の皆さんの中には「なんだろう??」と、気になってじっと眺めている方も多くいらっしゃったこの堆肥について早速、土壌の専門家でもある愛敬さんにお話を聞いてみました!

 

−−こちらの堆肥について、教えていただけますか?

愛敬さん:これは堆肥のサンプルです。生ごみが土にかえるステップを3段階用意しました。ステップ1では床材(とこざい)を作ります。床材は、籾殻、米ぬかなどの材料を混ぜて発酵させて作ったもので、質の良い堆肥を作るには生ごみを腐らせないことが重要なのですが、発酵させることで微生物が増えて、投入された生ごみを腐らせずに貯めることができるんですよ。

初めて聞く床材。匂いを嗅いでみると、森林の中に入った時を思い出す、芳醇な土のような香りが漂ってきました。

 

−−こちらのサンプルには、玉ねぎの皮や卵の殻、キノコのようなものまで色々なものが入っていますね。初期のものに比べると色もだいぶ変わってきますね。

愛敬さん:こちらはステップ2です。床材を敷き詰めた容器に生ごみを投入し、数週間たった段階のもので、野菜だけではなくて、お肉なんかも入っています。管理が大変そうだと思うかもしれませんが、実際に、生ごみをいれたら表面で軽く混ぜるだけで良いんですよ。置き場所もベランダや庭、畑など、太陽光が入る軒下のような場所であれば良いですね。

 

−−食べる物以外の“ごみ”でも堆肥にできるんですか?

愛敬さん:そうですね、ビニールなどが含まれるものはNGで、なんでもかんでもという訳にはいきません。でも、土の中の微生物によって分解されるようなものであれば、堆肥にすることができるんです。今では、土に還ることを意識した紙コップやお皿も販売されていて、少しずつですが社会も変わってきているのかなと感じます。

 

−−そしてこれが、完成した堆肥ですね。

愛敬さん:はい、これが完熟した堆肥です。このステップ3は、水分と温度を細かく管理して60℃以上を約1ヶ月キープしたもので、仕込みから約3ヶ月で質の良い完熟堆肥に仕上がります。
ここにあるステップ1からステップ3が基本的な流れになりますが、どうですか?難しく感じますか?

 

−−お話を聞いていると床材に堆肥にできる生ごみを入れて、表面を軽くかき混ぜたりしながら、あとは保管。ということなのでシンプルだなっていう印象を持ちました。完熟まで、少し時間もかかるので、馴染みのない私たちには、堆肥になるまでの変化が、理科の実験みたいで面白そうでもあるなって個人的には思います。(笑)

愛敬さん:たしかに、結構やってみると面白い!って思う人も多いですよ。(笑)ぜひ機会を見つけてチャレンジしてみてください!

 

−−そうですね!その時はぜひご指導ください!(笑)私自身も堆肥について知るきっかけになりましたが、参加者の方から質問を受けたり、関心の高い人も多くみられましたね。今回のこのケータリングに協力いただいた愛敬さんの感想をおきかせいただけますか?

愛敬さん:いろいろな観点から街づくりに関わっていらっしゃる方が多く参加されているイベントだけあって、日頃から興味関心をお持ちの方には特に深く刺さった実感がありました。

コンポストを中心とした資源循環の取り組みは、対象とするエリアの課題感や規模感によって各現場に合ったアプローチが必要になります。

街づくりにおいて、昨今特に資源循環を意識した仕組みを取り入れたい、むしろ導入必須とされるケースも多い、という話を伺えたのもとても勉強になりましたし、そういった取り組みに何かしら貢献できたら嬉しいなと、改めて思うきっかけにもなりました。

 

余った料理を堆肥に!コンポスターにも興味津々。

会場に設置されているショッピングカートのようなものは、小さな循環を可視化するプロジェクト『FARM SPOT』のシンボルとなるオリジナルデザインのコンポスト屋台。コンポスト屋台は、生ごみを堆肥にして循環させるコンポスターの機能をもつ装置で、以前、Mo:take MAGAZINEのFARM SPOTの記事でもご紹介した『建築設計事務所・ツバメアーキテクツ』の設計によるもの。ポップなデザインが可愛く、堆肥づくりを楽しくやっていこう!という想いが伝わってきますね。

 

この容器の中に床材が入っていました。これは今回のケータリングでフードが残った際、こちらに入れて無駄なく堆肥にするという仕掛けとして準備したもの。

ところが今回のイベントでは、提供したお料理はひとつも残ることなく全て参加者のみなさまにお召し上がりいただけたということで、このコンポストに生ごみが入ることはありませんでした!SDGsがテーマとなったイベントだけあって、食品ロスへの意識の高さが伺えました!

 

参加者の皆さんは、熱心に堆肥のサンプルやパンフレット、コンポスト屋台を見ながら、愛敬さんの説明に耳を傾けています。

参加者の方々にもお話を伺ってみると「脱炭素関連で廃棄物処理が注目されているのでとても興味深いです!」という方や、「こういった取り組みで、SDGsについて考えるきっかけをどんどん作っていかなきゃって思いますね!」といった声も。

イベント企画などをお仕事としている方からは、
「最近ゴミの問題について、もっと考えないといけないって思っていたので、とてもタイムリーな話題でした。ケータリングで循環野菜を使うだけでなく、ポップなコンポスターや堆肥のサンプルを一緒に展示するというところが、新しくてチャーミングな見せ方ですよね!こういう取り組み方でもいいんだ、始めることが大事なんだなぁって思えました」といったコメントもあり、みなさんのそれぞれの捉え方で考えるきっかけになっていた様子。

 

さらにコンポスターに興味を持ち、やってみたい!という参加者も。コンポスト屋台の容器をしっかりとベルトでホールドし、手でぐるぐると回しながら、床材がかき混ぜられていく様子に興味津々の皆さん。「子どものための食育にも良いですね!」など、いろんな感想が飛び交っていました!

 

品川区でも職員一人一人の取り組みで環境への意識が向上。

最後にこのイベントの主催である品川区の企画経営部SDGs推進担当課長・井添優子(いぞえ・ゆうこ)さんにお話をうかがいました。

 

−−とても大勢の方が参加され、活気があるイベントですね。ケータリングにもとても興味を示していただく方が多かったように思います。区の課題解決に向けたキックオフイベントということですが、開催されていかがでしたか?

 

井添さん:とても多くの企業さんに集まっていただき、ありがたい気持ちです!また、企業さん同士が横のつながりを持ってくださったので、区と企業はもちろん、企業同士でも新しいソリューションが生まれるのではという期待でワクワクしています。
やはり環境に対する意識が高い方が多いので、Mo:takeさんのケータリングにも関心を持たれる方が多かったのかなと思います!

 

−−ありがとうございます!今回はマイクで参加者のみなさんに向けて、ケータリングの説明をしていただいたので、「詳しく話を聞きたい」と2度も私たちが立つ堆肥の前に訪れてくれた方もいました。そこからも皆さんの環境への意識やSDGsへの関心の高さがうかがえました。

井添さん:そうですね!品川区の中でも、今、マイボトルをみんな持つようにしようとか、マイボトル給水機を導入したりとか、行動変容のためのさまざまな取り組みを進めているのですが、そういった草の根的な取り組みによって、職員一人一人の意識が高まっているのを感じますね。

 

今後は未来を担う子どもたちの意見を取り入れたい。

−−まさに、今回のケータリングのテーマでもある「小さな循環」が品川区さんでも実践されているんですね。今後、こういった取り組みを通じて、思い描いている未来や、こんな風になったらいいな、と思うことはありますか?

井添さん:今回は、大人向けのイベントとして開催しましたが、品川区では、“未来を担う子どもたちの思いを区政に反映していく”ということもやっていきたいと思っています。今の子どもたちは、SDGsネイティヴで、環境についての意識が教育を通じて培われているので、課題意識が高くアイディアも豊富なんですね。だからその声をもっと聞いていきたいなと思っております!

 

−−すごく素敵です!子どもたちにも、循環野菜や農業についても知ってもらいたいですね!本日は、ありがとうございました!

まずは、「知る」「触れる」機会をつくること。今回のケータリングは、そうした“キッカケづくり”が重要だということを、みなさんの関心の高さからも知ることができました。そして、一人一人の環境に対する小さな行動や取り組みが、周りの人にも影響を与えていくことを改めて実感する機会となりました。

今回のケータリングのテーマは「小さな循環」。食とコンポストを起点とした場づくりで生まれた様々なコミュニケーションから、また新たな循環が生まれる日が来るかもしれません。今後もこうしたカタチで、みなさんのキッカケになるような機会をMo:takeは提供していきます!

 

– Information –
Mo:take CATERING
FARM SPOT

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

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Mo:take MAGAZINEは、食を切り口に “今” を発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、その時、その場所は、より豊かになるはず。

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